こるね酒

原則毎日AM11時更新+α。日本酒好きのホルン吹きです。飲んだお酒を、ジブリ映画のキャラやシーンに例えながら紹介します。異論反論大歓迎。日本酒に詳しくない方でも、ジブリ作品に詳しくない方でも楽しんでいただけるように書いていきます。

[考察・もののけ姫]師匠連とは何者か? 師匠連=延暦寺説の検討

今回は、特別編。もののけ姫に言葉だけ出てきた「師匠連」とは何者かについて考察してみたいと思います。日本酒とは全く関係ないのですが、アイディアがわいてきたので。

ただそもそも、この映画の中には、師匠連は登場しません。ジコ坊の「やんごとなき方々や、師匠連の考えはわたしには判らん。判らんほうがいい。」という台詞などで出てきただけです。耳馴染みのない単語ですし、映画を観ていても、師匠連という存在に気が付かなかった方も多いのではないでしょうか。

いくつかの考察を見てみると、「ジコ坊は師匠連の一員」や「天皇直属の組織」などと書かれていることもあります。しかし、根拠はわかりませんでした。上の台詞では、師匠連はジコ坊と同じ組織の上司ではあっても、ジコ坊自身は師匠連ではないように聞こえます。また、やんごとなき方々(天皇・貴族)と師匠連も別のようですね。

あとわかっていることは、石火矢衆や唐傘連を派遣したのが師匠連ということくらい。

僕も、師匠連がどういう組織なのかは、全くわからない状態でした。
ところが、先日読んだ「世界のふしぎな色の名前」という本にその糸口があったんです。

この本はタイトルの通り、色の名前についての本です。当然ですが日本酒ともジブリとも関係ありません。
ただ、その中に出てきた犬神人色いぬじにんいろというページを開くと、目が釘付けになりました。そこに合ったイラストが、そのまんま石火矢衆だったんです。

(世界のふしぎな色の名前 P.68より引用)

この本によると、犬神人色とは、犬神人いぬじにんという下級神官が着ていた、柿渋で染められた服の色。犬神人は、神官とは言え最下層で、顔をかくす覆面をしていたそうです。

そこで、犬神人の方を調べ進めてみます。「一七世紀における清水坂「犬神人」の基礎的考察」という資料によると、犬神人は被差別民・非人の一種だったようですね。もののけ姫の舞台は室町時代なので、17世紀よりは前ですが、このあたりはそれほど変わらないでしょう。もののけ姫では被差別民を描くという宮崎駿監督の言葉とも一致します。

犬神人ともののけ姫を結び付ける考察もありました。「katariteのブログ」さんの記事に「一遍上人絵伝」の中の犬神人の絵が載っていました。というわけで、僕も図書館に行って一遍上人絵伝を調べてきました。

一遍上人絵伝
見つけたのは、中央公論社・日本絵巻大成の別巻。文庫本と比べるととても大きい本なのがわかります。問題の場面は、330頁。一遍上人の臨終の場面。ということは1289年、鎌倉時代中期ですね。拡大してみましょう。

犬神人と石火矢衆

犬神人の説明などは載っていませんでしたが、これは確かに石火矢衆と非常によく似ています。

どうやら、石火矢衆の元ネタは犬神人と言っても良さそうですね。
犬神人が犬神と戦っていたのかあ。

石火矢衆が犬神人だとすると、今度は師匠連の正体が見えてきます。
犬神人が下級神官なら、師匠連は上位クラスの神官と考えるのが自然。先程の「世界のふしぎな色の名前」の記述によると、「祇園神社に属する犬神人は特に有名で、ひとたび戦乱があれば武士と同様の働きをしたとも言われている」だそうです。まさに石火矢衆。

さらに話を勧めます。祇園神社の筆頭と言えば、現在の八坂神社。八坂神社は、10世紀末からは、天台宗比叡山延暦寺の末寺となっていました。神社が末寺って違和感ありますが、当時は神仏習合で神社とお寺に明確な区別はありませんでしたからね。室町時代になると、3代将軍・足利義満が、祇園社延暦寺から分離させます。しかし、織田信長延暦寺を焼き討ちするまでは、その関係は続いていたようです。

ということは、「師匠連=延暦寺」という考察が成り立ちます。延暦寺の住職を天台座主と呼びますが、この天台座主を中心とする最上位クラスが師匠連なのではないでしょうか。ちなみに天台座主には皇族が就くことが多く、朝廷とは深いつながりがありました。天皇の直属組織ではないものの、天皇のためにシシ神の首を求めるのもありそうです。

この頃の延暦寺は、朝廷とのつながりという政治的優位や、京都の東の入り口を押さえるという地理的優位もあり、多数の荘園や僧兵をかかえて足利将軍家ともバチバチにやり合うくらい強大な力を持っていました。しかも学問の最先端。師匠という意味合いとも一致します。ジコ坊はその名の通り坊さんなので、そちらとも辻褄が合いますね。

というわけで、僕は、師匠連=比叡山延暦寺の指導者層という説を提唱します。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

 

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