【雨降 杉山流 雄町 Dr.Sugiyama】
フレッシュで 芯にしっかり コク旨さ
なまおコメ呑み会のお酒⑩、はじめましての雨降さん。神奈川県伊勢原市・吉川醸造さんのお酒です。
吉川醸造さんの親会社は、東京都渋谷区に本社を構えるシマダグループ。従業員数は550名で、不動産・ホテル・介護・飲食・保育・旅行など幅広い事業を手掛けています。2020年に、吉川醸造の全株式を取得して日本酒事業に参入しました。
それまで全然酒造りをしていなかった企業がいきなり親会社になったのですから、蔵人さんは不安だったことだと思います。でもこのM&Aは、吉川醸造さんにとって幸せなものになりました。
杜氏の水野雅則さんは、2006年に吉川醸造に入社。2012BYを前に杜氏に就任します。でも、蔵元は毎年同じように酒を造るという方針で、設備投資にも消極的。思い通りの酒造りをすることはできませんでした。売上も低迷し、2020年春にはついに酒造りを止めてしまいます。
そんな中でのM&A。シマダグループから社長として吉川醸造に派遣された
そうして2021年4月に発売されたお酒はすぐ完売。その後の吉川醸造さんは、土田酒造さんに触発されて低精白をしてみたり、水酛に手を出してみたり、酵母無添加とか白麹・黒麹とか花酵母とか古代米とか、良い意味でやりたい放題。設備も更新され酒質も上がり、ファンもどんどん増えました。
このあたりの事情は、日本酒メディア・SAKE Streetさんの『事業譲渡が、杜氏の夢を実現。日本酒「雨降」は神奈川随一の個性を目指す - 神奈川県・吉川醸造』という記事を参考にさせていただきました。とても面白い記事。今回はだいぶ端折ったので、ぜひ元記事もご覧ください。
ただ、良いことばかりでもありません。吉川醸造と言えば、ラーメン屋さんのAFURI株式会社から商標侵害での訴訟を起こされたことでも注目を集めました。僕はどちらの味方もしていませんが、個人的には吉川醸造さんにも落ち度があったと認識しています。このあたり、解説すると非常に長くなってしまいますので、ここでは省略します。気になる方はこのブログの『雨降 vs. AFURI 商標問題の解説』という記事をご覧ください。この問題について、これ以上詳しく解説した記事は、僕の知る限りありません。
さて、今回のお酒です。
こちらは、雨降ではじめての秋あがり。年始に瓶詰めを行い、一回火入れして8か月間熟成とのことなので、生詰ですね。
そして、杉山流というのも気になります。杉山というのは、東京大学の農学博士だった故・杉山
このお酒を持ち込まれたのは、怠惰極盛さん。ありがとうございます。
雨降さん、売ってるお店は知ってて、いつかAFURIのカップラーメンと合わせて飲もうかと思ってたんです。でも飲みたいお酒が多すぎていつになるか全くわからなかったから、ちょうど良い機会になりました。
それでは、いただきます。
上立ち香、コクとほんのりアルコール。奥に控えめ柑橘酸。コクアルな香りだとクラシックなお酒が多い印象です。でもこの子は明らかにフレッシュでモダン。面白っ!
口に含むと旨甘酸。そこから酸旨広がります。マスカットのようなフルーティーさもありつつ、雄町らしい芯の太さと山廃っぽい乳酸感。後半は、ミネラル苦味とコク旨じわり。
なるほど、美味しいし面白い。
怠惰極盛さんによると、このお酒は、普段の雨降さんよりは香りが控えめなんだとか。これは他の雨降さんも飲んでみたいですね。
ジブリで例えると「風の谷のナウシカ」のアスベル。若いけど、そんなに甘くなくて、芯がしっかりしています。
好き度:★★★★
アスベルの声を担当したのは当時16歳だった松田洋治さんです。13年後に「もののけ姫」でアシタカの声を務めています。#風の谷のナウシカ pic.twitter.com/3z9qOSH2o1
— キャッスル@ジブリフリーク (@castle_gtm) 2023年7月7日
【DATA】
蔵元:吉川醸造株式会社(神奈川県伊勢原市)
造り:純米 生詰
原料米:岡山県産 雄町
精米歩合:60%
アルコール度数:16% ・・・ 高め
日本酒度:+4.5 ・・・ 辛口
酸度:1.6 ・・・ 高め
酵母:協会7号酵母
仕込み水:雨降山地下水(硬度150)
製造年月:2024年9月
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