
本日2025年8月22日、「崖の上のポニョ」が金曜ロードショーで放送されます。それを記念して、今回はこの映画を観ていて気付いた雑学特集です。
このシリーズ企画は今年からはじめていて、これまでに「君たちはどう生きるか」考察記事と、「紅の豚の細かすぎる雑学」「カリ城の細かすぎる雑学」を書きました。おかげで非常にたくさんの方に見ていただけています。かなり面白い記事になっているので、よろしければこちらもどうぞ。
そんなわけで今回は崖の上のポニョの特集です。でも僕、実はポニョはそんなに観た回数が多くないんですよね。でも今回久しぶりに観てみたら、なかなか面白い発見がいくつもありました。
それでは、知らなくても楽しめるけど知ったらもっと楽しいポニョの雑学をお届けします!
と言いたいところなんですが、まずは例によってお酒の紹介です。
はじめて来てくれた方もいらっしゃるかもしれないので説明すると、このブログは日本酒ブログなんです。いつもは、日本酒をジブリのキャラやシーンに例えながら紹介しています。ポニョのキャラについても、これまで32本紹介しています。その中で、いちばん買いやすくてちゃんと美味しいのがこちら、月桂冠さんのセブンイレブン限定酒・フレッタです。フレッタには3種類あるんですが、いちばん甘くて飲みやすいのがこの赤いの。日本酒を飲みなれていない方にこそお勧めですし、玄人の方は3本飲み比べたら月桂冠さんが何を目指しているのかがよくわかります。
ポニョに例えたお酒では、大阪の「かたの桜」さんや人魚が描かれた「大嶺 夏のおとずれ」も超絶美味しいですが、入手しやすさから言ったら断然フレッタですね。良かったら飲んでみてください。
それでは、ようやく本編スタートです。ポニョの映画公開は2008年。テレビ放送は3年ぶり7回目です。他の作品同様、2~3年に1度は放送されていますね。初回の2010年の放送時には、ジブリ歴代4位となる29.8%という高い視聴率を記録しています。
それもあって、もうネタバレを気にせずいきますが、ネタバレを踏みたくない方は映画を見終わってから続きをご覧ください。
では、映画の時間軸に沿って、進めていきます。
■イカ雑学

冒頭のシーン。このイカはコウイカっぽいですね。でかいけど。
骨のような甲を持つからコウイカという名前です。コウイカは無脊椎動物の中で一番賢い生き物。スミイカと呼ばれるくらいスミをたっぷり持っていて、そのスミはかつてはインクとして使われてました。その色がセピア色の語源です。
ただ、イカ墨から作られたインクは退色しやすく1年ほどで消えてしまうと言われています。それを逆手にとって、江戸時代には借金の借用書をイカ墨で書いて、消えるのを待ってごまかす人がいたそう。
それが「イカサマ」の語源です(諸説あり)。
■舞台のモデル・鞆の浦


ポニョの舞台は、広島の
鞆の浦は、ジブリの社員旅行で使われ、その後も宮崎駿監督が長期滞在してポニョの構想を練られました。
歴史上では、織田信長に京を追い出された室町幕府15代将軍・足利義昭が、毛利輝元の庇護のもと、鞆の浦を拠点にしました。将軍とは言え既に実権はなかったのですが、この亡命政権は「鞆幕府」と呼ばれています。
■リサの子育て


リサの子育ての凄さがよくわかるのがこの左のカット。
宗介って、他人を思いやることのできる良い子です。でも母親の不機嫌に引っ張られることなく笑顔になれている。これ、大人でもなかなかできないですよ。ましてや5歳児には普通は無理。
不機嫌な母親の横で笑顔でいられるのは、リサとの関係がしっかりできているから。不機嫌でも自分をちゃんと愛してくれているという安心感があるんです。
自分の子どもにちゃんと愛情を伝えるのって、めちゃくちゃ大事です。逆に子どもに不機嫌をぶつけちゃいけません。それをやっちゃうと、親の顔色を伺う子になってしまいます。まあ、言うは易しなんですけどね。
■ポニョ=ワルキューレ

フジモトはポニョのことをブリュンヒルデと呼んでいます。
ブリュンヒルデは、北欧神話で、死んだ戦士をヴァルハラに連れていく戦乙女・ワルキューレ姉妹の長女の名前。マクロスのバルキリーなど多数の作品の元ネタですね。ブリュンヒルデは、ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」に登場する、北欧神話の主神・ヴォータン(オーディン)の娘です。父に背いて岩山の頂上(崖の上)で神性(魔法)を失って眠らされ、英雄のキスで目覚めます。お! どこかで聞いた話!


「ニーベルングの指輪」は、演奏に15時間もかかる超大作。普通は4夜にわたって演奏されます。その第1夜が「ワルキューレ」。第1夜ではあるんですが、2作目なのが罠ですね。その前に、序夜「ラインの黄金」があります。
ポニョの制作中、宮崎駿監督は「ニーベルングの指環」を大音量で流しながら作業していたそう。
ちなみに、初めてオペラを見ようとするとなかなか辛いです。本やマンガで予習してから見るのが超おすすめ。上の写真の本は僕がけっこう昔に買ったやつなのでもう絶版っぽいですが、挿絵が素晴らしいし、中身もちゃんとしているのでおすすめです。古本ならまだ手に入ります。
なお、今回の解説ではワーグナーの「ニーベルングの指輪」をベースにしていますが、この物語は神話・伝説が元になっているだけあって、いろんなバージョンが存在します。その違いを一覧表にしてくれている方もいて、個人的にはめちゃくちゃ面白かったです。ありがとうございます。→ニーベルンゲン伝説、各エピソードの相違点
■休眠遺伝子とその活性化


フジモト「個体の先天的劣等因子がDNAの汚染で覚醒した」
遺伝子の中には、通常は発現していないものが多数あり、休眠遺伝子と呼ばれています。それが宗介の血をなめたことで活性化したということですね。ポニョは、フジモトとグランマンマーレの血を引いているので「先天的劣等因子」というのは人間の遺伝子でしょう。それが活性化されて、半魚人の姿になったということですね。
休眠遺伝子の活性化はというのは物語の中のお話しじゃなくて、ちゃんと実例があります。
農研機構とアステラス製薬は、世界初の技術で微生物の休眠遺伝子を活性化させ、これまでとは異なった特異な構造をした新たな抗生物質の発見に成功しています。
微生物の「休眠遺伝子」を目覚めさせ、新たな抗生物質を発見
さらに、通常は休眠している長寿に関わる遺伝子「サーチュイン遺伝子」を活性化させることで寿命を伸ばそうという研究も進んでいます。これが実現したら不老不死に一歩近づけますね。
“不老”を科学し 「人生100年時代」のさらに先へ | 未来コトハジメ

フジモト「カンブリア紀にも比肩する生命の爆発」
カンブリア紀は、約5億年前くらいの地質時代です。生物が爆発的に多様化し、今とは全く異なる形態の生物がたくさんいました。




有名なところでは、アノマロカリス・オパビニア・ハルキゲニア・ウィワクシアなど。いらすとやさんって本当になんでもありますね!
■へそ!

実は地味に重要なのがこのカット。よく見るとへそが描かれています。つまり、魚類じゃなくて半魚人(なに類?)でもなくて哺乳類になったってこと。それを確かめるためにわざわざ服をめくってるんですね。

このシーンのBGMのタイトルは「ポニョの飛行」。明らかにワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」より「ワルキューレの騎行」のパロディーです。先述したようにポニョはワルキューレの名を持ってますからね。
「ワルキューレの騎行」は、ロ短調の力強い曲。コッポラ監督の戦争映画「地獄の黙示録」で使われたことで有名ですね。ポニョでは明るいイメージのヘ長調にアレンジされています。ヘ長調の曲と言えば、オケ界隈ではベートーヴェンの交響曲第6番「田園」ですね。明るいイメージがある調です。

「ポニョの飛行」は、メロディーを「ワルキューレの騎行」に似せただけじゃありません。実はもっと大事なのは伴奏。ファゴットとホルンで演奏される、タンタカン・タンタカン・タン という部分も同じです。楽譜はIMSLPより。
ちなみに「ワルキューレの騎行」は、ドライブ中に聴くには最も危険な曲であるという研究結果もあります。ドライバーの危険回避の動作が約20%も遅れるんだとか。
■舞台は日本じゃなかった!

天気予報に映る地図、よく見たら日本のようで日本じゃないですね。別の世界。でも、台風はちゃんと瀬戸内海っぽいところを目指しています。
■チキンラーメンは日本酒に合う!


このラーメンはチキンラーメンですね。粉末スープが別に付いてたりしてないですし。
ちなみにチキンラーメン、日本酒のアテとして超優秀です。クラシックなお酒にもモダンなお酒にもめっちゃ合う。僕が時々伺うお店には250円でチキンラーメンがあって、よくいただいてます
■リサの子育て2

リサが宗介を置いて出るのには賛否両論あります。でもここにもリサの子育ての凄さが見えるんです。
リサは「絶対戻ってくるから」と言い、宗介は納得します。ということは、リサはこれまでに約束を破ってないということ。リサは約束を必ず守ることを知っているから、宗介はリサの言うことを信じることができる。子供って、例えば「今度公園に行こう」のような大人のささいな言葉でも約束と思うから、これって凄いことです。
■御神渡り


船員「観音様の御神渡りだ」

写真はphotoACからお借りした御神渡り。御神渡りは最低気温-10℃以下の日が3日ほど続くと発生するんだとか。ただ、近年は温暖化の影響で御神渡りの発生が少なくなっています。ちなみに諏訪には
■グランマンマーレの正体とフジモトの末路

グランマンマーレの正体はチョウチンアンコウの人魚です。
人間の体に見えている部分が疑似餌。その下は、どのシーンでも全く描かれていません。フジモトはその疑似餌に釣られたんですね。そしてその後にとんでもない運命が!
チョウチンアンコウの生殖方法はかなり独特。オスは、矮雄と呼ばれ、メスの1/10ほどの大きさしかありません。生殖の際には、まずその小さなオスがメスに噛みつきます。すると皮膚が融合し、血管がつながり、オスは最終的にメスの身体に吸収されて同化してしまいます。オスには口も脳もなくなるけど、生殖器だけは残る。つまり、出すものさえ出せば、しゃべらなくても、考えなくてもいいってこと。怖っ!
でも、さらに怖いのはここからです。

宮崎駿監督の企画書によると、フジモトはグランマンマーレのたくさんの夫のうちのひとりらしいです。でも他の夫は出てきません。
ということは既に…。そして、いずれフジモトも…。
怖っ!
それを思うと、上のシーンでグランマンマーレに触れられたフジモトが身を縮ませている意味もわかりますね。
■デボン紀

グランマンマーレ「素敵な海。魔法の力に満ちていて、まるでデボン紀の海に戻ったよう」
デボン紀はだいたい4億年前。カンブリア紀から約1億年後です。この時代は魚類が多様に進化して豊かな海を形成しており、「魚の時代」とも呼ばれています。




いらすとや、デボン紀の生物まであるのか!
■ブリュンヒルデちゃうんかい!

フジモト「ポニョが人間の血を飲んだんだ」
普通にポニョって呼んでるやん。順応性高いな!
■生命は泡から生まれた

グランマンマーレ「あら、私たちは元々泡から生まれたのよ」
地球上の生命は、最初は泡のようなものだったと言われてます。その泡が自己複製する仕組みを獲得し、いつしか生命を宿しました。
■水中からみた表現


水中からの視点で水の外が揺らいでる表現と言えば、カリオストロの城のこのシーンですよね。映画館で観た時、周りから笑い声が起きたのを思い出します。もちろん去年の公開45周年記念リバイバル上映の話しですよ。
■現代に生きる古代魚


古代魚ディプノリンクスは、古生代デボン紀前期から中期に生息していました。
この
ちなみに、夏眠する生き物は意外にたくさんいます。蛙とかカタツムリとかてんとう虫とか。タイムリーなことに、いつも見てる「へんないきものチャンネル」さんで一昨日その動画が出ていました。
■トンネルは異世界の入り口


トンネルと言えば異界への入り口ですね。千と千尋の神隠しでもトンネルを抜けたら不思議な世界でした。井戸や川もよく「こちら」と「あちら」の境界になっています。
以上、いかがだったでしょうか。普通に観るだけでも楽しい作品ですが、僕も書いていて、深掘ったら深掘るだけ面白くなりました。
最後に宣伝です。
ジブリではありませんが、機動戦士ガンダムGQuuuuuuXのオープニングの影響か、なぜアニメのエンディングでは左に走る/歩くのかという特集記事もよく読んでいただいています。下にもリンクがあります。
日本酒に興味のある方は、2024年で最も面白く書けた記事BEST10 をお勧めします。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。感想やコメント、違う意見などをいただけるととても嬉しいです。
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