こるね酒

日本酒ブログ。原則毎日昼12時更新+α。飲んだお酒を、ジブリ映画のキャラやシーンに例えながら紹介します。日本酒に詳しくない方でも、ジブリ作品に詳しくない方でも楽しんでいただけるように書いていきます。

[特集]もののけ姫の細かすぎる雑学

もののけ姫

本日2025年8月29日、「もののけ姫」が金曜ロードショーで放送されます。それを記念して、今回はこの映画を観ていて気付いた雑学特集です。

このシリーズ企画は今年からはじめていて、これまでに「君たちはどう生きるか」考察記事と、「紅の豚の細かすぎる雑学」「カリ城の細かすぎる雑学」「ポニョの細かすぎる雑学」を書きました。おかげで非常にたくさんの方に見ていただけています。どれもかなり面白い記事になっているので、よろしければそちらもどうぞ。

そんなわけで今回はもののけ姫の特集です。知らなくても楽しめるけど知ったらもっと楽しいもののけ姫の雑学をお届けします!

 

と言いたいところなんですが、まずは例によってお酒の紹介です。

はじめて来てくれた方もいらっしゃるかもしれないので説明すると、このブログは日本酒ブログなんです。いつもは、日本酒をジブリのキャラやシーンに例えながら紹介しています。もののけ姫のキャラについても、これまで158本紹介しています。その中でも特に美味しかったのがこちら、山口のお酒・わかむすめさんの十二秘色です。わかむすめさんはどれを飲んでも甘くてフルーティーで素晴らしい、大好きな銘柄。ぜひ一度飲んでみてください。ちなみに8/31までなら、「山口エール便」というキャンペーンで送料無料で購入できます。わかむすめさんを売ってる酒屋さんは→こちら

 

それでは、ようやく本編スタートです。もののけ姫の映画公開は1997年。テレビ放送は2年ぶり13回目です。初回の1999年の放送時には、35.1%という驚愕の視聴率を記録しています。これでもジブリ歴代2位って、、、
そういうわけで、もうネタバレを気にせずいきますが、ネタバレを踏みたくない方は映画を見終わってから続きをご覧ください。
では、映画の時間軸に沿って、進めていきます。

 

武装紹介(エミシ編)

もののけ姫
冒頭のシーン。この矢の矢じりは黒曜石ですね。鉄で作る矢じりとは明らかに形が違います。
ちなみに、岩宿の石器さんという方が、石と鹿の角で叩きながら黒曜石の矢じりを作る動画を上げられています。面白い!


もののけ姫
エミシの人々の武装は、槍と盾。
西洋とは違い、日本(ヤマト政権)では飛鳥時代以降はほとんど持ち盾が使われていないので、明らかに文化が違うことがうかがえます。
日本で持ち盾が使われなかったのにはいくつかの理由があります。主な理由として、
・武士のメイン武器が弓で、両手を必要とした
・一般兵士もメイン武器は長刀なぎなた、後には長槍で、両手を必要とした
・盾の代わりに大鎧が発達した
等が挙げられます。


■エミシの歴史

もののけ姫
「ヤマトとの戦に敗れ、この地に潜んでから五百有余年」
もののけ姫室町時代が舞台。その500年以上前と言えば、征夷大将軍坂上田村麻呂蝦夷阿弖流為あてるいを下した「延暦二十年(西暦801年)の征夷」が有名ですね。
ちなみに僕は昔、坂上田村麻呂が最初の征夷大将軍だと習いました。でも最近の教科書では違うようです。
鎌倉幕府成立が1192年じゃなくなったり、最初の鋳造貨幣が和同開珎じゃなくなったり、あの絵が足利尊氏じゃなかったり、歴史も新発見で変わりますね。



■黒曜石のナイフ

もののけ姫
カヤがアシタカに渡したのは黒曜石のナイフです。
先ほど矢じりを作っていた岩宿の石器さんは「黒曜石のナイフで豚肉を切る」というショート動画も出されています。切れ味にびっくりしますよ。



■トキ

もののけ姫
このシーンの背景、朱鷺トキが飛んでいますね。
トキの学名は「ニッポニア・ニッポン」。かつては日本中にいました。映画公開の1997年には既に野生絶滅していたトキを登場させることに、宮崎監督のメッセージを感じます。
そういう意味では、クライマックスでトキさんが「生きてりゃなんとかなる!」と言うのも深読みしたくなります。
そう言えばトキ(朱鷺)は青鷺(アオサギ)と対になりそうですね。


武装紹介(ヤマト編)

もののけ姫
もののけ姫

先ほどはエミシの武装について見ましたが、今度はヤマト側の兵士を見てみましょう。兵士たちは長刀なぎなたを多く持ってますね。あと、弓矢と刀。実は南北朝時代くらいまで、戦闘形式は個人戦の様相が強く、兵士の最も主要な武器は長刀でした。それが戦国時代になると集団戦が多くなり、味方を傷つける可能性のある長刀よりも槍の方が多くなります。そりゃ、近くで長刀をぶん回されたら怖いですもんね。
刀の長さも時代劇なんかで見慣れているものよりもだいぶ長いです。これも、個人戦が多かった影響が強いです。そして戦国時代になるとまた集団戦になり、刀も短くなります。


■砂金が通用しなかった理由

もののけ姫
室町時代の貨幣は、明から輸入された銅銭やそれを真似た私鋳銭が主でした。でもエミシの里には流通していなかったようですね。
逆に室町時代までの金山はエミシの里があったと思われる東北地方に集中していました。特に陸奥国の金山は有名で、東大寺の大仏建立にも使われています。ただ、そこから遠く離れた西の方では砂金は見られなかったのでしょう。タタラ場がどこにあったかは描かれていませんが、京よりも東だったらオッコトヌシの一団がその付近を通ったことになり、その情報がジコ坊たちの耳に入らないわけはないため、京よりは西だと言われています。



■味噌


ジコ坊が作っているのは、味噌粥です。
味噌のルーツは紀元前700年頃の古代中国で作られていたひしおという発酵調味料で、日本には飛鳥時代に入ってきたと言われています。
その後、「味噌」としてはじめて文献に登場するのは平安時代。その頃は高級品でした。それが庶民に広がったのがもののけ姫の舞台である室町時代です。戦国時代になると、味噌は芋がら縄として必須の携帯食になります。

 

 

■3本指の奇蹄目

もののけ姫
シシ神様は蹄が3つだから分類的には奇蹄目ですね。奇蹄目は、後肢の指が1本または3本の奇数であることが特徴です。例えば、馬は1本指、サイは3本指。「後肢の指」と言ったのは、バクの指が、前肢4本・後肢3本だから。
逆に偶蹄目では、牛や鹿は2本指、猪や豚は4本指。ただ、最近は鯨も偶蹄目に近いとされ、鯨偶蹄目と呼ばれています。もちろん蹄はありません。

もののけ姫
ヤックルは偶蹄目っぽいですね。鯨偶蹄目ウシ科ヤギ亜科かな。



■シシ神=肉神?

もののけ姫
シシ神様はシシの神様と解釈できますが、そもそものシシって古語では食肉や、狩猟対象の動物のことなんです。イノシシは「ヰ(猪)のシシ(肉)」。シカは古くは「カ(鹿)のシシ(肉)」と呼ばれていました。獅子とは別。
また、シシだけで鹿を表すこともあって、鹿威ししおどしや、鹿踊ししおどりという言葉にその名残があります。試しに「しし」で変換してみてください。環境にもよりますが、僕の環境では「しし」が鹿・猪・肉に変換できました。

 

 

■石火矢衆=犬神人

もののけ姫

石火矢衆のモデルは、中世の下級神官・犬神人(いぬじにん)だと思われます。犬神人は神官とは言え最下層。被差別民・非人の一種だったようです。
犬神人が犬神と戦っていたのかあ。


ちなみに、石火矢衆(犬神人)が着ている服の色は、犬神人色。画像は『世界のふしぎな色の名前』という本からの引用です。この本によると、「祇園神社に属する犬神人は特に有名で、ひとたび戦乱があれば武士と同様の働きをしたとも言われている」そうです。まさに石火矢衆!


■製鉄あれこれ

も
木簡には「玉鋼 上」と書いています。
玉鋼というのは、たたら製鉄で作られる純度が高く高品質な鋼のこと。刀剣などに用いられます。エボシ様はそれを叩く音によって品質検査をしていたんですね。
玉鋼の製法が確立したのは天文年間(1532~1554年)なので、タタラ場で玉鋼を作っているのは最先端の技術です。ただし、「玉鋼」という呼び方になるのは明治以降なので、そこの部分は創作ですね。

もののけ姫
タタラ場では、たくさんの人が鉄を叩いて鍛えています。これは「鍛造」という工程。
叩くことで、鉄の結晶が微細化&整列して強度が高まり、不純物が取り除かれ、炭素量も調節されて強くなります。
ちなみに鋼(はがね)とは、鉄に0.0218%~2.14%の炭素が含まれた合金のこと。炭素が混ざることで、純度100%の鉄よりもずっと強く硬くなり、加工もしやすくなるんです。
逆に炭素が多すぎても脆くなります。製鉄でできたばかりの鉄(銑鉄)は炭素量が多いので、鍛造することで炭素量を調節する必要があります。
ってことを科学ではなく経験でやってしまう先人たち凄い!

 

■養鶏の歴史

もののけ姫
タタラ場では、鶏も飼っていますね。
日本の養鶏の歴史は定かではありませんが、弥生時代には既に鶏を飼育していたと考えられています。
世界で見ると、紀元前3000年にインドでキジが家畜化されたのが養鶏のはじまり。5000年前!!

 

 

武装紹介(鉄砲編)

もののけ姫
「こわやこわや。エボシ様は国崩しをなさる気だ」
国崩しとは、戦国時代の大砲の異名でもあります。
鉄砲は戦国時代に一気に日本でも広まりましたが、その理由は、威力よりもむしろ扱いの簡単さにありました。槍や弓矢や刀って、習熟するのには訓練が必要です。でも鉄砲はずっと簡単に兵士を戦力化できる(人を殺せるようになる)。だから、人道的にはともかく女性でも子どもでも兵士になれるんです。
そういう意味で、エボシ様の目論見は実に的確です。

 

■タタラ製鉄は重労働

もののけ姫
「4日5晩踏み抜くんだ」
たたら製鉄では、火を絶やさないために常にふいごを踏んで風を送る必要があります。これは男性でもキツい重労働。4日5晩というのは、もちろん交代制。後ろに休んでる人がいますね。休むと言っても1時間踏んで2時間だけ休憩。満足に寝る時間はありません。でもキツすぎて1回1時間が限界なんですね。
この交代の順番を「番子(ばんこ)」と言います。「かわりばんこ」の語源。

もののけ姫
このシーン、アシタカが踏むとふいごが軽々と動きます。でも、ふいごを押すのは体重をかけるだけだから、筋力は関係ないはずなんですよね。アシタカの体重が凄いのか、呪いの不思議な力なのか。


■猩々=酒飲み

もののけ姫
猩々は、元々中国古典や能などに登場する伝説上の生き物で、赤い顔をして酒を好む動物です。生物の授業で習ったショウジョウバエも、赤い目をしていて酒に集まる習性があることからそう名付けられたんだとか。
ちなみに奈良には「猩々」という日本酒があります。前に飲んだんですが、パラジクロロベンゼンみたいな香りのするカップ酒でした。

 

 

■猪が泳いでやってくる

もののけ姫
「鎮西のオッコトヌシだ」
鎮西とは九州のこと。だから「海を渡って来たと言うのか」になるんですね。ちなみに本州と九州を隔てる関門海峡は最狭部で幅630m。猪は海でもちゃんと泳げるから、その気になれば渡れそう。

ただし、関門海峡は日本でも有数の潮の流れが速い海域です。しかも1日に4度流れの方向が変わります。源義経はその潮の流れを読んで壇ノ浦の戦いに勝利しました。渡る時間は選ぶ必要がありますね。

関門トンネル
関門トンネル

ちなみに現代なら、関門人道トンネルを通って歩いて渡ることもできます。写真はおととしの酒学しゅがく旅行で渡ったときのもの。



武装紹介(盾編)

もののけ姫
先ほど日本では持ち盾はほとんど使われていないと言いましたが、矢を防ぐ置き盾は一般的でした。また、鉄砲の弾を防ぐためには、竹を縄で縛った竹束が使われていました。
ちなみにこの家紋は、三つ星に一文字。「渡辺星」とも呼ばれ渡辺氏の家紋で、ルーツは摂津国渡辺です。



■師匠連とは何者か

もののけ姫
「師匠連から矢の催促だ」
「師匠連への約束を果たしてから戦でもなんでもやればよかろう」
つまり、エボシ様は師匠連と神殺しの契約して、その見返りに石火矢衆や唐傘連を借りているということですね。「僕と契約して神様を殺してよ」ってこと。

師匠連が何者かは劇中では示されていません。でも僕は師匠連=延暦寺を唱えています。ただの思いつきではなく、様々な証拠を積み上げてたどりついた結論。その知的冒険の様子は、下のリンクからご覧ください。



■公方って誰よ?

もののけ姫
「アサノ公方が地侍どもをそそのかしているのだ」
公方とは、国家的な統治権を持つ人を表す言葉。将軍を指すことが多いです。犬公方(徳川綱吉)や剣豪公方(足利義輝)とかで使いますね。また、室町時代の鎌倉府長官を鎌倉公方と呼んだり、それが分裂した古河公方堀越公方などの例もあります。
もっと非公式に、荘園や公領を支配した武家が、統治権の保持者として「公方」と名乗ることもあったそう。アサノ公方はそうした武士集団の棟梁のことでしょうね。



■サンの家事?

もののけ姫
もののけ姫

ちょっと前のシーンで穴の開いていたアシタカの服が繕われていますね。しかもあんまり上手じゃない。たぶんこれ縫ったの、サンですよね。

 

 

■サンのおしゃれ① 装飾品

もののけ姫
このシーン、前に撃たれて壊れた仮面がちゃんと下半分なくなってるの、芸が細かい!
サンって、首飾りとかおっきいイヤリングとかヘアバンドとかして、意外におしゃれさんですよね。でもあれ、誰が作ったもの?
そんな疑問の答えがわかるのがこのシーン。

もののけ姫
モロのねぐらは明らかに人工物ですね。岡田斗司夫さんの説によると、ここはかつて縄文人が犬神を祀っていた祠。だからサンはその名残の装飾品や、縄文っぽい仮面を付けているんです。犬であるモロはまだ人間が大好きで、その思い出の場所にずっと住んでるって話、大好き。

こちらの29:58くらいからがその解説なんですが、全編めちゃくちゃ面白いのでぜひ見てみてください。

 

 

■サンのおしゃれ② 刺青を彫ったのは誰?

もののけ姫
サンと言えば特徴的なのが、登場シーンから印象的だった顔の赤い刺青。あれは誰がなんのために入れたんでしょう?

上記の岡田斗司夫さんの説によると、モロは縄文人達に神として祀られて力を得ていたけど、いつしか神殿には人が来なくなり、それと共に神々は力を失っていきました。

縄文時代に刺青の文化があったかどうかについて確定した説はないようですが、その可能性は示唆されています。また3世紀になると、「魏志倭人伝」の中に、日本人は全身に刺青を入れていたという記述があります。
ここで、縄文人のタトゥーについて、「和楽WEB・縄文人はタトゥーをしていたか?イレズミで蘇る縄文の思想」という記事を見てみましょう。この記事のよると、縄文土器土偶の顔に彫られた紋様、そしてタトゥーは、呪術的な意味を持っていたと考えられるそうです。

ここまでくると、刺青を彫った人物とその理由が明確になります。再びモロを祀り、力を取り戻させるために、サンが自分で刺青を入れたのです。あくまで僕の説ですが。
もしかすると、この先サンは、モロの息子たちを祀るため、古代人のように全身に刺青を入れるのではないでしょうか? そうすると、夫となるものはさらにおぞましきものを見ることになるのかもしれませんね。

 

 

■たぬき警察出動案件

もののけ姫

ん? サンの足元のしましま尻尾はアライグマ? 狸の尻尾にはこんなしましまはありません。
#たぬき警察 さーん、こっちです。

 

 

■花咲か爺

もののけ姫
「シシ神は花咲か爺だったんだ」
昔話・花咲か爺の成立は室町時代末期から江戸時代初期にかけてと言われています。ってことは、この時点では昔話じゃなくて最新の物語ですね。
そしてその隣の女性は、らい病が治っています。

 

以上、いかがだったでしょうか。宮崎駿監督は教養があるし、日本を舞台にしていることもあって、掘っていくとどんどん知識が深まります。僕も調べててめちゃくちゃ楽しかった!!

 

最後に宣伝です。

ジブリではありませんが、機動戦士ガンダムGQuuuuuuXのオープニングの影響か、なぜアニメのエンディングでは左に走る/歩くのかという特集記事もよく読んでいただいています。下にもリンクがあります。

日本酒に興味のある方は、2024年で最も面白く書けた記事BEST10 をお勧めします。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。感想やコメント、違う意見などをいただけるととても嬉しいです。


関連記事:

 

ブログランキング・にほんブログ村へ←投票リンク踏んでいただけると、とても嬉しいです。