こるね酒

日本酒ブログ。原則毎日昼12時更新+α。飲んだお酒を、ジブリ映画のキャラやシーンに例えながら紹介します。日本酒に詳しくない方でも、ジブリ作品に詳しくない方でも楽しんでいただけるように書いていきます。

[特集]かぐや姫の細かすぎる雑学

かぐや姫の物語

本日2026年1月9日、「かぐや姫の物語」が金曜ロードショーで放送されます。それを記念して、今回はこの映画を観ていて気付いた雑学特集です。

このシリーズ企画は去年からはじめていて、これまでに「君たちはどう生きるか」考察記事と、「紅の豚の細かすぎる雑学」「カリ城の細かすぎる雑学」「ポニョの細かすぎる雑学」「もののけ姫の細かすぎる雑学」「千と千尋の細かすぎる雑学」を書きました。どれもなかなか面白い記事になっているので、よろしければそちらもどうぞ。

そんなわけで今回はかぐや姫の物語の特集です。知らなくても楽しめるけど知ったらもっと楽しいかぐや姫の物語の雑学をお届けします!


かぐや姫の物語の映画公開は2013年。テレビ放送は8年ぶり3回目です。初回の2015年の放送時の視聴率は18.2%でした。前回は2018年ですか。だいぶあきましたね。でもその時の視聴率10.2%で、その時期の他の作品と比べても特に低いわけじゃありませんでした。

今回も、ネタバレを気にせずいきます。そもそもストーリーは普通に竹取物語ですしね。それでもネタバレを踏みたくない方は映画を見終わってから続きをご覧ください。
では、映画の時間軸に沿って、進めていきます。

 

■物語の時代背景

かぐや姫の物語

この映画の原作はもちろん「竹取物語」。平安時代前期に成立した、現存する日本最古の物語と言われる作者不詳の作品です。物語の舞台がいつの時代かは明示されていませんが、後述の理由で奈良時代初期という説が濃厚です。
この映画では、平安時代の文化が多く描写されています。でも、東大文学部卒業で絵巻物の研究を行い、リアリズムを重視した高畑勲監督がその違いに気付かないわけはない。だから、意図的に舞台を平安時代に変えているのでしょう。

 

 

■高畑演出のリアリズム

かぐや姫の物語
かぐや姫の物語

高畑演出のリアリズムがよく表れているのが冒頭のこのシーン。遠景のカットではナタの動きと音のタイミングずれが大きく、近づくとずれは小さくなっています。



■舞台は奈良県広陵町

かぐや姫の物語

今は昔、竹取の翁というものありけり(中略)名をば讃岐造さぬきのみやつことなむいいける
翁の名前が「讃岐造」であることから、大和国広瀬郡散吉さぬき郷、今の奈良県北葛城郡広陵町三吉にある小さな神社・讃岐神社が「竹取物語ゆかりの神社」とされています。

このあたりには竹林が多く、讃岐国(香川県)から竹細工を得意とする集団が移住してきて朝廷に竹製品を献上していたそうです。広陵町が物語序盤の舞台とすると、讃岐神社から平城京朱雀門までの直線距離は15km。平地ですし、徒歩で十分に往復できる距離ですね。

 

 

■身長(?)9cm

かぐや姫の物語
かぐや姫の物語

このシーン、原作では「三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり」。
1寸≒3.03cmとして3寸≒9.1cm。アリエッティの身長が約10cmだから、3寸が身長か座高かにもよるけど、だいたい同じくらいですね。

 


茅葺き屋根

かぐや姫の物語

翁の家は茅葺かやぶき屋根っぽいです。茅とは、ススキ・ヨシ(アシ)・チガヤ・ササなど、屋根材や飼料・肥料などに使われるイネ科などの草本の総称。縄文時代から屋根材として使われていたと考えられています。僕のおばあちゃんちが以前は茅葺きでした。
藁葺わらぶきとも似ていますが、大きな違いは耐久性。茅は油分を含んでいるため藁よりも長持ちし、耐用年数は15〜20年、長いと40〜50年持つと言われています。



木地師の仕事

木地師とは、漆椀の元となる木椀を作る人たちのこと。
このシーンの元ネタは、民族文化映像研究所が1976年に制作した「奥会津木地師」という記録映画だと思われます。

かぐや姫の物語

椀を作る工程は、
①木を切り倒し、曲がりヨキという斧で椀の荒型を切り出します。

かぐや姫の物語
奥会津の木地師

②手斧で荒型の外側を整え、内側をくり抜きます。ケガしそう!怖い!

かぐや姫の物語
奥会津の木地師
かぐや姫の物語
奥会津の木地師

③手動の横型ろくろ(旋盤)で形を整えます。

かぐや姫の物語
奥会津の木地師
かぐや姫の物語
奥会津の木地師

なお、こちら↓から映画の抜粋版を見ることができます。

ちなみにろくろは、紀元前6000年前から紀元前2400年前の間にメソポタミアもしくはエジプトで発明されたとみられます。日本では奈良時代に、木製の百万塔がろくろで大量生産されました。これに仏教の呪文を書いた紙・陀羅尼だらにを収めたのが、現存する世界最古の印刷物・百万塔陀羅尼です。作ったのは、日本のラスプーチンと名高い法王・道鏡。百万塔は4万数千基が、陀羅尼は国宝の100点を含め約4000点が現存します。

これを調べてて、大変なものを見つけてしまいました。
百万塔陀羅尼、2万円で売ってます。レプリカとは書いてないから、本物の可能性すらあります。購入者、今年1月4日から今日1月9日の間だけで10人もいるし、そのコメントが「急遽必要になった為急いでお願いしました」とか「安くて、可愛いです。また、色違いで買います」とかカオスwwww

百万塔陀羅尼
百万塔陀羅尼

なお、こちらの販売サイト、Xに投稿しようとしたら、有害認定されてポストできませんでしたwww 見るのはたぶん大丈夫だけど、シャレで買ってみようとは思わない方が良さそうです。

 

 

■瓜はスミレ?

かぐや姫の物語

2人が食べているのは、マクワウリ。メロンの仲間で、メロンほど甘くはないけど、ほのかな甘味が爽やかで美味しいです。日本では縄文時代から食べられていた形跡があるほど古くから親しまれてきました。
ちなみに、マクワウリもメロンも、ウリ科キュウリ属、もく名は、1980年代のクロンキスト体系ではスミレ目でしたが、1990年代以降DNA解析によって主流になったAPG体系ではウリ目になっています。植物の分類も変わってるんですね。



寝殿造

かぐや姫の物語
かぐや姫の物語

この屋敷の建築様式は、平安時代以降の寝殿造しんでんづくりです。奈良時代の建築と違い、寝殿造は壁の代わりに格子状の板戸・しとみで覆い、昼間はそれを開けて開放的な屋内空間を作っています。

 

斎部氏いんべうじ

かぐや姫の物語

かぐや姫の名付け親は斎部秋田いんべのあきた。映画見てるだけじゃ、こんな字だとはわかりませんね。
斎部氏は、古代朝廷の祭祀や祭具作製・宮殿造営を担った氏族です。ただ、平安時代には力を失い、祭祀氏族の座は中臣氏・大中臣氏に占有されてしまいました。先ほど紹介した、竹取物語ゆかりの奈良県広陵町の讃岐神社の一帯は、讃岐国の斎部氏が移り住んだ地です。だから、もしかしたら翁と斎部秋田は縁続きなのかもしれませんね。

 

■平安装束

かぐや姫の物語
和風の着物は、奈良時代の後期に原型が生まれ、平安時代に完成しました。十二単じゅうにひとえ平安時代の中期に完成した女房装束の正装。季節やシーンなどで色の組み合わせ(かさねの色目)を変えることで、風流を楽しみました。色目には、それぞれ名前が付いています。

普段からうちのブログを読んでくれている日本酒好きの皆さんにはおなじみですよね。

 

■びんざさら

かぐや姫の物語

この楽器は「びんざさら」。中世に流行した「田楽」などで盛んに使われ、平安時代の「年中行事絵巻」の中にすでにその演奏の様子が描かれています。

 

 

■5人の公達にはモデルがいた

かぐや姫の物語
この5人の公達にはモデルがいます。歴代朝廷の高官の名を列挙した官員録「公卿補任」に同名や同官職の人物が載っているんです。左から、
・車持皇子→藤原不比等ふじわらのふひと
・石作皇子→多治比嶋たじひのしま
・阿部右大臣→阿倍御主人あべのみうし
・大伴大納言→大伴御行おおとものみゆき
・石上中納言石上麻呂いそのかみのまろ

不比等!? えらいビッグネームが出てきましたね。
この5人はみんな壬申の乱の功臣で、天武天皇持統天皇に仕えた人物。つまり、都の様子も合わせると、物語の舞台は奈良時代初期と思われます。

 

■利子の歴史

かぐや姫の物語

元も子も無くしてしまった
元も子もないとは、失敗して何もかもすっかり失うこと。元金も利子も失うということからきています。

利子の歴史は、実は貨幣の出現よりも古いとされています。紀元前3500年頃、古代メソポタミアでは、穀物や家畜の貸し借りに収穫物や子孫を利子として返す形があったそう。日本における利子も、律令時代には、春に稲の種を貸し出して秋の収穫期に利息として収穫した稲を返す「出挙すいこ」という制度がありました。

ただ、「元も子もない」という言葉の初出は「精選版 日本国語大辞典」によると、延宝8年(1680年)に出版された俳諧の撰集「俳諧・山之端千句」だとされています。平安時代にはこの言葉はなかったかもしれません。 

 

 

正倉院の宝物は国宝ではない

かぐや姫の物語

帝が飲んでるこのコップ、正倉院に収蔵されている宝物・瑠璃坏ですね。正倉院とは、聖武天皇光明皇后ゆかりの品など、天平時代を中心とした多数の美術・工芸品が収蔵されている宝物庫。毎年秋に開催される正倉院展は、いつも大混雑しています。

でも、正倉院に収蔵されている数々の特級の宝物は、国宝ではないんです。なぜなら、正倉院御物は天皇家の所有物だから。国宝を指定するのは文化庁で、天皇家の所有物を管理するのは宮内庁だから、管轄が違うんですね。ただ、「古都奈良の文化財」がユネスコ世界遺産に指定を受ける際に「所在国の国内法で文化財に指定されていなければならない」という条件があったから、それを通すために正倉院の建物だけは国宝になっています。

 

 

■釣殿と、紫式部と、福井県

かぐや姫の物語
かぐや姫の物語

釣殿とは、寝殿造りの邸宅に設けられた、池に面して水面に張り出すように建てられた建物です。どんだけ庭が広いねん!!
3枚目の写真は、福井県越前市にある紫式部公園の釣殿。なぜ越前市紫式部公園があるかというと、紫式部が実際に越前に住んでいたことがあるからです。今でも越前市には、公認の行政系VTuberとしてファンタスティック平安クレイジー紫式部さんがいらっしゃいます。

 

 

■羽衣を返すタイプの天女伝説

かぐや姫の物語
かぐや姫の物語

このシーンは、天女伝説を表していると思われます。この松の木は、三保の松原。漁師が浜で天女の羽衣を見つけ、それを隠してしまったせいで天女が帰れなくなってしまったという昔話です。天女は漁師の子を産んだけど、その後、天に帰ってしまった。でも、漁師と子供が月を寂しく見上げるのと同様、記憶がないはずの天女もなぜか悲しんでいます。
ちなみに、羽衣伝説は全国各地にあります。それどころか「盗まれた服」タイプの民話は世界各地に存在。中国・韓国・ベトナムインドネシアなどのアジア諸国だけでなく、フランスやカナダ、南米ガイアナにも似た話があるんだそう。

また、能の「羽衣」では、漁師が浜で天女の羽衣を見つけて、、、というところまでは同じだけど、ここからがちょっと違います。昔話では漁師は羽衣を返さず、天女は天に帰れずに漁師と結婚することになります。でも能の「羽衣」では、漁師はちゃんと天女に羽衣を返し、天女はその礼として月宮の様子を表す舞を舞います。漁師、ええやつやん。ちなみに能の方の漁師の名は、白龍。めっちゃカッコいい名前!!



以上、いかがだったでしょうか。さすが高畑作品。調べれば調べるほどいろんな雑学が増えていきます。そして、知識があれば映画がもっと面白くなる。また、今回は取り上げませんでしたが、アニメーション表現としても、物凄い作品でした。

 

最後に宣伝です。

このブログは、一応日本酒ブログです。日本酒に興味のある方は、2025年で最も面白く書けた記事BEST10 をお勧めします。美味しいお酒を知りたい方は、2025年で最も美味しかったBEST10 をどうぞ。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。感想やコメント、違う意見などをいただけるととても嬉しいです。


関連記事:

 

ブログランキング・にほんブログ村へ←投票リンク踏んでいただけると、とても嬉しいです。