こるね酒

日本酒ブログ。原則毎日昼12時更新+α。飲んだお酒を、ジブリ映画のキャラやシーンに例えながら紹介します。日本酒に詳しくない方でも、ジブリ作品に詳しくない方でも楽しんでいただけるように書いていきます。

東京八王子酒造 > 月島朝子さん(耳をすませば)[ジブリ酒]

東京八王子酒造(とうきょうはちおうじしゅぞう) prototype1 ver.19 純米吟醸生原酒】

芳醇な しっかりくっきり バランス派

東京八王子酒造

東京八王子酒造
東京八王子酒造
東京八王子酒造

なまおコメ呑み会のお酒③
はじめましてのお酒、東京八王子酒造さん。東京都八王子市・(株)舞姫さんのお酒です。

東京八王子酒造さんは、八王子駅から徒歩5分の街中に2023年6月に誕生した新しい日本酒醸造所です。料亭の併設された、厨房を改造したという小さな酒造さんで、醸造場の面積は約38平方㎡。11.5坪、23畳ほどですね。前に伺った福岡のLIBROMさんが10坪だからほとんど同じ規模。めちゃくちゃ小さいです。醸造場には金土日曜限定ですがショップも併設されており、ここで搾ったばかりのお酒を購入できます。サーバーからその場で瓶詰めしてくれるんだとか。

東京八王子酒造

東京八王子酒造
東京八王子酒造
東京八王子酒造


面白いのは、造ったお酒を保存しているのがKEGなんです。KEGは、しぼりたての風味やフレッシュ感を長期間そのまま維持できるという10Lタンクの日本酒サーバー。なるほど、小規模ならそういう手もあるんですね。KEGについては、前に特集を組んだのでよろしければご覧ください。KEGってなに? 特徴は? 構造は? 銘柄は?みたいなことを全部書いています。

 

ちなみに東京八王子酒造さん、設立までの経緯が、近年起業された他の醸造所とはひと味違っていて面白いです。
東京八王子酒造を立ち上げたのは、八王子で生まれ育った西仲鎌司さん。八王子は、かつては20軒の酒蔵があった酒造りの盛んな街でしたが、その数は次第に減っていき、2012年にはついに最後の1軒も廃業してしまいました。西仲さんの実家は酒類を扱う商社で、「いつか自分たちの手で造ったお酒も売りたい」と思っていたそうです。そこで、東京オリンピック誘致が決まった2013年から、日本酒製造参入を検討するようになりました。

ところが、日本酒製造免許の新規発行はほとんど不可能です。WAKAZEの三軒茶屋醸造所の設立(2018年)や「稲とアガベ」の誕生(2021年)もまだ先のことなので、先例もありません。そんな中、西仲さんに酒蔵の事業譲渡の話が舞い込みます。それが、長野県諏訪市にある舞姫さん。「真澄」の宮坂醸造さん、「本金」の酒ぬのや本金酒造さん、「麗人」の麗人酒造さん、「横笛」の伊東酒造さんと並んで、諏訪五蔵の一角を担う酒蔵さんです。僕は飲んだことはないんですが、「近江ねこ正宗」を引き継いだ「信州ねこ正宗」を造るお蔵さんということで名前は憶えています。ともかくそういう経緯で、西仲さんは(株)舞姫のオーナー社長になりました。ちなみに近江ねこ正宗を造っていた近江酒造さんの廃業と信州ねこ正宗の誕生は2023年なので、ここにも西仲さんが関わっていたんですね。ねこ正宗のデザインほんと好きだから、信州ねこ正宗も飲んでみたいです。

 

酒蔵の社長となった西仲さんは、八王子の地酒復活を目指して動き始めます。まずは八王子の農家さんを訪問し、酒米を作ってもらうように交渉。全量買取の契約栽培でなんとか作ってもらえるようになり、2015年にそのお米を使った「高尾の天狗」をリリース。翌年からは、田植え・稲刈り・酒造り体験などのイベントを開催して、「八王子に酒蔵を復活させたい」という夢を徐々に八王子の人たちの間にも広げていきます。途中、コロナ禍での足踏みもあったものの、2022年12月にようやく八王子での日本酒製造免許を取得できました(既存事業者の醸造所設立は、新規設立とは違い認められています)。

そうして、10年以上の月日を重ねてようやく実現した醸造所。めちゃくちゃ熱いやん。これは応援したくなります。

今回のお酒は、prototype1のver.19。プロトタイプ(試作品)なんですね。タンクごとに味わいも違っていて、ver.19は「prototype1過去イチ!の濃醇さ」なんだとか。

ちなみにこのお酒を持ち込まれたのは、仲良くしてもらっている6インストゥルメンツさん。貴重な機会をありがとうございます。上の醸造所の写真も6インストゥルメンツさんから送っていただいたものです。

ちなみに6インストゥルメンツさんにはこの時、能登の魚醤・いしりをいただきました。いしりは、いしるとも言い、秋田のしょっつる・香川のいかなご醤油と並ぶ日本三大魚醤のひとつ。イカの内臓や鯖の骨・内臓、鰯などが使われた醤油です。後日、冷奴・キノコ炒め・焼き厚揚げなんかに使ってみたんですが、普通の醤油よりも旨味が豊かでめちゃくちゃ美味しかったです。ありがとうございました。

いしり
いしり
いしり
いしり


閑話休題。それでは東京八王子酒造さんを飲んでいきましょう。

上立ち香、はっきりぽわわと複雑に。爽やかラムネとリンゴの酸と、穀物旨さとアルコール。

口に含むと味わいも、しっかりくっきり甘旨酸。先に旨酸が広がって、甘味苦味もふくらんで、最期はバランスよく締める。

美味しいです。芳醇フルーティーなモダンタイプだけどお米の旨味もしっかり。良い感じの苦渋もあって、食事にも合わせやすそうです。

ジブリで例えると「耳をすませば」の月島朝子さん。主人公・雫のお母さんです。40代で大学院に通っています。自分のやりたいことにしっかり向き合っている、カッコいい女性。

ちなみにこの「耳をすませば」という作品、恋愛映画のように思われがちですが、僕は脚本を書いた宮崎駿さんと監督の近藤喜文さんがテーマにしているのは恋愛じゃないと思っています。この映画に登場する大人は、みんな自分のやりたいことがはっきりしてるんですよね。お母さんは原作では専業主婦だったけど、子育てをひと段落させてから大学院に入って勉強してるし、お父さんも仕事の傍らで郷土史の研究をしてる。お爺ちゃんズは音楽を続けてる。大人じゃないけど、聖司くんも夢に向かって留学しようとしてる。そんな中で自分のやりたいことを探してもがく姿が、宮崎&近藤監督の描きたかったことなんだと思います。
というようなことを、10年以上かけて夢を実現したお酒のレビューを書きながら考えました。

好き度:★★★★

東京八王子酒造

東京八王子酒造

【DATA】
蔵元:株式会社 舞姫(東京都八王子市)
造り:純米吟醸
精米歩合:55%
アルコール度数:16% ・・・ 高め
製造年月日:2026年2月14日

 

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