こるね酒

日本酒ブログ。原則毎日昼12時更新+α。飲んだお酒を、ジブリ映画のキャラやシーンに例えながら紹介します。日本酒に詳しくない方でも、ジブリ作品に詳しくない方でも楽しんでいただけるように書いていきます。

雅楽代 > 翔(借りぐらしのアリエッティ)[ジブリ酒]

雅楽代(うたしろ) 鳴神(なるかみ)

新しい きれいな淡麗 辛口酒

雅楽代

雅楽代
雅楽代
雅楽代

半年ぶりの雅楽代さん。新潟県佐渡市・天領盃酒造さんのお酒です。
実は去年11月から蔵元の加登さんがYouTubeチャンネルでの配信を本格的に始められていて、最近よく見てるんです。自社のお酒だけじゃなく他社のいろんな美味しいお酒の紹介もされていて、それでいて蔵元ならではの視点もあってとても興味深いんです。

そんなこともあって、雅楽代さんを飲みたい熱が上がっていたところだったんです。そしたら立ち寄ったお店にちょうど置いてたから、ここぞと飛びつきました。

今回いただく鳴神はレギュラー銘柄なので、ここで天領杯酒造さんについて復習しておきましょう。

蔵元の加登仙一さんは、酒蔵の跡継ぎでもなんでもない一般家庭の生まれ。酒造りをしたいと思っていたわけでもありません。転機になったのは、大学時代のスイス留学。そこで、ブレイクダンス仲間が自国の文化を自慢しているのを聞き、自分が日本のことを語れない事にショックを受けんだとか。この時点でいろいろツッコミどころがあるんですが、ひとまず続けます。

帰国後、初めて日本酒専門のバーに行って飲んだお酒に感動し、加登さんは日本酒業界で起業することを決意します。そして大学卒業後、就職したのは証券会社でした。その理由は起業したときに活かせる財務や経営の知識を学べるからだと言いますが、やっぱりツッコミたくなる。でもまだまだ続きます。

で、起業するにも日本酒製造の免許が新規には下りないことを知り、蔵をM&Aで買い取ることにします。それが社会人2年目の時。そして目を付けたのが佐渡の天領盃酒造さん。理由は、財務状況がダントツで悪かったから。
なんでやねん!! もう、意味がわかりません。ツッコミどころが多すぎてパンクしそうです。

だけどそこから加登さんは、銀行の融資を取り付け、2018年に本当に蔵を買い取ってしまいます。当時24歳。当然のように全国最年少の蔵元でした。しかも当然、酒造りも経営も未経験。そこから蔵を改革し、発売したお酒・雅楽代はまたたく間に人気銘柄になります。異次元すぎて全く理解ができません。いろんな経営者のエピソードを聞くことはありますが、その中でもダントツで意味がわからない。だからめちゃくちゃ面白いし、カッコいい。一般人の常識的なツッコミなんて何の意味もなかったということですね。

なお、こんな経歴を見ると、加登さんはバリバリ意識高い系の尖がった若者というイメージになりますが、YouTubeチャンネルで話されているのを見ると、やわらかい話し方が親しみやすい好青年でした。イケメンですし。目先の売上のために流行の酒質に合わせるのではなく、自分たちの造りたい酒質を追求する姿勢にも共感します。

 

さて、雅楽代という銘は、お蔵さんの住所・佐渡市加茂歌代(かもうたしろ)に由来し、それと「びでしいとき」を掛けています。

そしてそもそもの加茂歌代という地名の由来は鎌倉時代、後鳥羽上皇の息子の順徳上皇にまで遡ります。1221年、順徳上皇は後鳥羽上皇と共に鎌倉幕府に対して挙兵します。それが世に言う承久の乱。ご存じのように承久の乱は鎌倉方が勝利を収め、後鳥羽上皇は隠岐に、順徳上皇は佐渡に流されてしまいます。
その佐渡で、順徳上皇は島の人々の歌(和歌)を気に入り、その返礼として土地を与えました。それが、歌の代わりの土地・歌代です。

ちなみに順徳上皇は歌人としても有名で、小倉百人一首には順徳院の名で「百敷(ももしき)や 古き軒端(のきば)の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり」という和歌を残しています。これは百人一首の100番目、最後の歌です。昔の栄華を懐かしく思う歌なんですが、都に帰れないまま佐渡で生涯を終えた順徳上皇の気持ちを考えると、この歌の痛切さが身に沁みます。
また、小倉百人一首の撰者・藤原定家も、後鳥羽上皇・順徳上皇に仕えた人。この歌を100番目にすることで、かつての栄華に想いを馳せるとともに、百人一首1番目の天智天皇から始まった貴族社会の終わりを痛感していたのかもしれません。

雅楽代という銘は、そんな歴史も背負っているんですね。

そんな雅楽代さんは、流行の甘旨フルーティーではなく、「新しい新潟淡麗」、すなわち、「佐渡のやわらかな天然水と農家さんの努力が詰まった減農薬米によって造られた、キレイで軽くフレッシュなお酒」を目指して酒造りをされています。
その中でも今回の「鳴神」は、雅楽代の中で最も辛口のお酒とのこと。新しい新潟淡麗の辛口がどんなお酒なのか、楽しみです。
それでは、いただきます。

上立ち香、ごくおだやかに、お米の旨さ。

口当たり、小さくかわいい乳酸と、控えめピリっと微炭酸。酸が少し広がったかと思った次の瞬間にすっと消えて、やさしい旨味がじんわり残る。
含み香はほとんどなくて、後味も少し旨味があるけどすぐに溶けて消えます。

なるほど淡麗辛口。甘味も苦味もほとんどない、とてもきれいな辛口酒でした。淡いのに薄っぺらさは全くないのが不思議。これは確かに新しさを感じます。

 

合わせたアテは、ゴマかんぱち。これが大当たり。強くはないけどしっかりした魚の旨味と、ほんのり生臭さがあって、それがお酒に合います。お酒の旨味がアテの旨味によって、大きさは変わらないけど、奥行きが深くなりました。

ジブリで例えると「借りぐらしのアリエッティ」の翔。やさしくてきれいな男の子です。

好き度:★★★★

雅楽代

雅楽代

【DATA】
蔵元:天領盃酒造株式会社(新潟県佐渡市)
アルコール度数:14.5% ・・・ 低め
製造年月:2025年12月

 

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