こるね酒

日本酒ブログ。原則毎日昼12時更新+α。飲んだお酒を、ジブリ映画のキャラやシーンに例えながら紹介します。日本酒に詳しくない方でも、ジブリ作品に詳しくない方でも楽しんでいただけるように書いていきます。

[特集]耳すまの細かすぎる雑学

耳をすませば

本日2026年5月1日、「耳をすませば」が金曜ロードショーで放送されます。それを記念して、今回はこの映画を観ていて気付いた雑学特集です。

このシリーズ企画は去年からはじめていて、これまでに「君たちはどう生きるか」考察記事と、「紅の豚の細かすぎる雑学」「カリ城の細かすぎる雑学」「ポニョの細かすぎる雑学」「もののけ姫の細かすぎる雑学」「千と千尋の細かすぎる雑学」「かぐや姫の細かすぎる雑学」を書きました。どれもなかなか面白い記事になっているので、よろしければそちらもどうぞ。

そんなわけで今回は耳をすませばの特集です。知らなくても楽しめるけど知ったらもっと楽しい耳すま雑学をお届けします!


耳をすませばの映画公開は1995年。30年以上前なんですね。しかも舞台は現代日本。だから、30年前はこんなだった/30年前から変わらないというとこに注目して観るのも面白いです。

テレビ放送は4年ぶり13回目。初回1996年の時の視聴率は18.5%でした。でもそこから人気は衰えず、4回目の放送である2002年には20.5%の高視聴率をたたき出します。さすがに近年はテレビ自体見られなくなってるのでそこまでではありませんが、それでも2桁をキープしているのがさすがです。

さて、今回も、ネタバレは気にせずいきます。ネタバレを踏みたくない方は映画を見終わってから続きをご覧ください。
では、映画の時間軸に沿って、進めていきます。

 

■カントリーロードの原曲は「故郷へ帰りたい」

耳をすませば

冒頭に流れるのは「カントリー・ロード」の英語版。原曲は1971年にジョン・デンバーが歌ってビルボード全米2位という大ヒットになりました。でもここで使われているのは、1974年にオリビア・ニュートン=ジョンがカバーしたバージョンです。
ちなみに原曲の邦題は「故郷へ帰りたい」。映画の中で雫が「故郷って何かわからない」って言っているのと対照的です。


こちらが原曲。曲の構成も違いますね。


面白いところでは、「ビューティフル・サンデー」が有名な田中星児さんによる1976年のカバーもあります。こちらはまた歌詞の雰囲気が耳すま版とは全然違って面白いですよ。

 

 

■実在企業のリアリズム

耳をすませば
耳をすませば

この映画、実在の企業をそのまま登場させていることも特徴です。この画像は京王百貨店とファミマ。実在の企業を使うのって、許可を取ったり気を使ったりいろいろ大変だから、普通はちょっともじって別の名前にしてしまいます。「サトーココノカドー」とかね。でもそのひと手間をかけることで「この映画の舞台は自分の住んでる世界と同じなんだ」というリアル感が圧倒的に増しています。ちなみにサトーココノカドーは期間限定で現実化したこともあります



■舞台は聖蹟桜ヶ丘

耳をすませば
耳をすませば

耳をすませばの舞台は、東京都多摩市の聖蹟桜ヶ丘のあたり。聖蹟桜ヶ丘駅を出てすぐのところには散策マップの看板があって、しっかり耳すまの舞台であることを主張しています。スタンプラリーもありますよ。写真は僕が去年聖地巡礼に行ってきたときのもの。ちなみに、聖蹟桜ヶ丘にはもうひとつ日本酒飲みの聖地があるんですが、そちらは残念ながら散策マップには載っていませんでした。

 

 

■レジ袋有料化

耳をすませば

「またビニール袋?牛乳1本なのに」
#30年前はこんなだった 当時は買物したらレジ袋をくれることが当りまえだったんですね。でも環境問題からレジ袋がもったいないという意識もめばえてきていて、ちょうど過渡期なのだとわかります。ちなみにレジ袋有料化が義務付けられたのは2020年から。つい最近やん!

 


■ワープロ全盛期!

耳をすませば

「ワープロ空いた?」「今プリントアウト中だよ」
#30年前はこんなだった 1995年は、今は死語になったワープロ全盛期の終わり際ですね。この年にWindows95が発売されて、一気にみんなパソコンを使うようになりました。まあ、当時うちにはWindows3.1すら無くて、MS-DOSで動くEPSONのPC-286を使ってたんですが。もちろんフロッピーディスクは5インチでした。急にインターネット老人会の臭いがしてきたので話を戻すと、最後にワープロが発売されたのは2000年。シャープの書院シリーズ「WD-CP2」だそうです。



■図書館のバーコード化

耳をすませば
耳をすませば

「わが図書館もついにバーコード化するんだよ」
#30年前はこんなだった 当時は図書館で本を借りるときには貸出カードに名前を書いていました。それがシステム化され始めたのがこの時代。ちなみに貸出カードは山田文具店さんで売ってるので、耳すまごっこがしたいかたはどうぞ。

これも好き。

 

 

■団地は今もちゃんとある

耳をすませば
耳をすませば

#30年前から変わらない 雫が住んでる団地のモデルは、今もちゃんとあります。

耳をすませば
建物が14棟立ち並ぶなかなか大規模な団地ですが、緑が多くて住みやすそうな環境です。坂は多いですけどね。

耳をすませば
団地のまん中あたりにそびえ立つのは給水塔。実際に見るとかなり巨大で遠近感がバグります。給水塔は、安定した水圧で各家庭に水を供給するために、高い位置まで水をくみ上げて貯めておくための設備です。ひと昔前まではあちこちにあったんですが、その後、各棟の屋上にタンクを置く高置水槽方式が主流になり、今は地下にタンクを置いてポンプでくみ上げる受水槽式給水や、受水槽を使わない直結給水方式に取って代わられました。直結給水方式は停電には弱いんですけどね。



■飛行船やアドバルーンって見なくなったよね

耳をすませば

#30年前はこんなだった 飛行船って見つけたらテンション上がるけど、そういえば最近ほとんど見ませんね。まあ、昔もそんなにしょっちゅう見てたわけじゃないけど。
飛行船広告やアドバルーンは、戦後から高度成長期にはよく見られていましたが、最近はめっきり見なくなりました。これは、
・高層ビルが増えて飛行船を飛ばしても目立たなくなった
・事業用の飛行船操縦士免許の取得がほぼムリゲー(自家用飛行船で40時間以上の飛行経験が必要)
・屋外広告物条例の基準が自治体ごとにバラバラで手続きが煩雑
などの理由があります。
ただ、今でも飛行船広告を手掛けている会社はありますし、大規模な展示会ではブースの上にバルーンが浮いてたりラジコン飛行船が飛んでたりしますね。

 

■この風景は宮崎駿さん・ 近藤喜文さんの見た昔の聖蹟桜ヶ丘

耳をすませば

#30年前はこんなだった? このシーン、背景には田んぼもあるし、道はアスファルト舗装とは明らかに色が違うし、けっこうのどかな田舎の風景に見えます。もちろん、今の聖蹟桜ヶ丘は、緑は豊富だけど田んぼなんて全く見当たりません。これ、1995年当時にしてもちょっと田舎過ぎない? と思ったら、そのヒントは地図の中にありました。

耳をすませば
(航空写真をクリックするとGoogleマップに飛びます)
中央からちょっと右上に聖蹟桜ヶ丘の駅があるんですが、そこから反対側・左下に行くと、日本アニメーション株式会社があります。日アニ!! 日アニと言えば、かつて「世界名作劇場」を制作していた会社。本作では脚本・制作プロデューサー・絵コンテとして参加している宮崎駿さんは、1973年から1979年まで日アニ(当初はズイヨーという社名で、途中で改称)に在籍しており、アルプスの少女ハイジ・フランダースの犬・母をたずねて三千里・あらいぐまラスカル・赤毛のアンに参加しました。初監督作品の未来少年コナンも日アニ制作です。本作監督の近藤喜文さんも1978年に日アニに合流して、未来少年コナンの原画・赤毛のアンのキャラデザを行っています。
つまり、このシーンの聖蹟桜ヶ丘の風景は、1995年当時ではなく、かつて宮崎さん・近藤さんが働いていた頃の風景なんじゃないかと考察します。

と、ここまで考えて、答え合わせのために調べてみたらちゃんと情報がありました。聖蹟桜ヶ丘在住のたまこん!さんのサイト「耳をすませば通信」によると、少年マガジン 1995年7月19日号のインタビューで宮崎さんは「今回久しぶりに聖蹟桜ヶ丘に行ったんですけど、ずいぶんビルが増えてたんで、10年くらい前に戻しました」と語っているそうです。やっぱり!
この「耳をすませば通信」、とんでもない情報量でめちゃくちゃ読みごたえがあります。耳すま好きな方には超おすすめです。

 

 

■有人改札と自動改札

耳をすませば
耳をすませば

#30年前はこんなだった 1枚目の画像は、雫の家の最寄り駅・向原駅。モデルは聖蹟桜ヶ丘駅のとなりの百草園駅です。よく見ると有人の手動改札! 2枚目は聖蹟桜ヶ丘駅がモデルになっている杉の宮駅。こちらは自動改札化されていますね。京王線の自動改札化は1990年から順次進められているので、ちょうど手動改札が残っているぎりぎりのタイミングだったのかもしれません。自動改札とは言っても、もちろんICカードが登場するのはもっと後のことです。

 

 

■郵便差出箱8号

耳をすませば

#30年前から変わらない いろいろ変わってるところがある一方でポストは変わりませんね。このタイプ、今でも普通に見ます。ちなみにこのタイプのポストの正式名称は「郵便差出箱8号」。名前がカッコいい! 1966年から使われています。
他のタイプのポストが見たい方は、郵政博物館の「郵便ポストの移り変わり」というページで、日本最初のものから見ることができます。

 

 

■開けられる電車窓

耳をすませば
#30年前から変わらない この電車の窓は、下半分が開けられるタイプですね。窓の開かない電車も増えてはいますが、開くタイプもまだまだ現役です。というのも、2005年に窓が開かないタイプの209系電車が停電で動かなくなった際、換気ができなくて体調不良を訴える乗客が続出したから。その事件を受け、209系は一部窓が開くように改造されました。そのおかげで、コロナ禍のときに窓を開けて運転することもできたんですね。

 

■キング・オブ・深夜バス

耳をすませば

東京⇔福岡のバス!?!?!?
お前、一部界隈では有名なキング・オブ・深夜バスの「はかた号」じゃないか!
はかた号は公開当時は京王電鉄との共同運行でした。

 

 

■消えた焼却炉

耳をすませば

#30年前はこんなだった 左に焼却炉がありますね。これもすっかり見なくなりました。小型の焼却炉やドラム缶による焼却は、ダイオキシン発生による大気汚染や健康被害が問題になっていて、2000年に施行されたダイオキシン類対策特別措置法で禁止されたんです。違反すると5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金だからなかなか重い。

 

 

■金の豚、紅の豚

耳をすませば

地球屋の店先に置いてあるのは、金の豚。猪にも見えますが、生物学上は猪も豚も同じ種です。金の豚は、金運向上・子孫繁栄・無病息災をもたらす縁起物です。特に十干十二支の丁亥(ひのとい)は「金猪年」と呼ばれる60年に1度のラッキーイヤーで、この年に生まれた子は金運・財運に恵まれるとされることから、アジア圏を中心に出生率が上昇する傾向があります。今年2026年の丙午(ひのえうま)の逆ですね。
あと、北欧神話にグリンブルスティという金の猪が登場します。こちらはあんまりメジャーじゃなくて、検索したら濃紺のガンダム(厳密にはガンダムではない)ばっかりヒットします。

耳をすませば

ちなみにこのシーンの時計には「Porco Rosso」と書いてます。紅の豚やん!

 

■聖司くんの心の声

耳をすませば

聖司くんのセリフ「好きなだけ見てていいよ。俺、下にいるから」
聖司くんの心の声「ヴァイオリン作ってるカッコいい俺を見てもらお。あと、たぶん弾いてって言われるから準備しとこ。カントリーロード練習しといてよかったあああああ」

からのこのシーン

耳をすませば

聖司くん、ヴァイオリンを取り出していきなり弾き始めます。ヴァイオリンって片付けるときには必ず弓を緩めておかなきゃいけないんですよね。じゃないと弓が傷むから。そうすると、ケースから出した後は、弓を張らなきゃ弾けないはずなんです。緩めてなかったってことは、こいつ、準備してやがった! 張り切っちゃって、かわいいのう。

 

 

■実は珍しい爺ちゃんズの楽器

耳をすませば

本作屈指の名シーン・カントリーロード即興演奏。実はこの爺ちゃんズが演奏してる楽器はぜんぶ古楽器。普通は実物を見る機会なんてほぼありません。

耳をすませば

まず、西さんの楽器は、チェロではなく、ヴィオラ・ダ・ガンバ。16~18世紀にヨーロッパで使われていましたが、ヴァイオリン属に比べると音量が小さかったため、次第に使われなくなりました。チェロとの違いは、まずはチェロが4弦なのに対して6~7弦であること。あとは弦を押さえる目安となるフレットが付いてたり、床に固定するエンドピンがなかったり、ちょっとなで肩だったりといろいろ。
ちなみにヴィオラ・ダ・ガンバの本体の共鳴孔はf字じゃなくてc字なのが一般的。でも西さんの楽器はf字孔ですね。たぶん自作じゃないかな。

耳をすませば
弓の持ち方もチェロとは違います。

耳をすませば

北さんの演奏しているのは、リュート。中世からルネサンス・バロック期まで使われていましたが、やっぱり音が小さいため使われなくなりました。

耳をすませば

面白いのは、南さん。タンバリン→ツィンク(コルネット)→リコーダーと持ち替えます。タンバリンの歴史は非常に長く、その祖先は紀元前20世紀のバビロニアのレリーフに見られます。ツィンクは古代の角笛に起源を持つ楽器で、唇を震わせて音を出す金管楽器の一種です。つまりこの人、打楽器・金管楽器・木管楽器を全部演奏してるんです。

 

 

■聖司くんの心の声2

耳をすませば

聖司くんのセリフ「いちばん先に、雫に教えたかったんだ」
聖司くんの心の声「よっしゃ!下の名前で呼んでやったぜ! ああ、緊張したああああ」

 

 

■実は厳しいお爺ちゃん

耳をすませば

ただし条件が1つある。僕を雫さんの物語の、最初の読者にしてくれること。
大人になると、この言葉の厳しさがわかります。厳しいからこそ優しい。創作って、始めるよりも完成させる方がずっと難しいんですよね。明確な締切があって、読ませる相手も決まったから雫の物語が一旦完成したのかもしれません。

 

 

■イバラードの世界

耳をすませば

このシーンの美術は、井上直久さん。イバラードという幻想的な世界を描き続けられている方です。実は僕、井上直久さんの「イバラードの旅」というCD-ROM画集を持ってるんですよね。CD-ROMという言葉が既に懐かしい。一時期は壁紙にしていました。
で、今もまだ売ってるのかなとAmazonを覗いてみたら、ちゃんと売ってました。プレミア付いて3万円で!!

イバラードの旅

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  • シンフォレスト
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■聖地巡礼写真

ここらで、せっかく聖地巡礼したんだから写真をいくつか挙げておきます。

耳をすませば
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耳をすませば
耳をすませば
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耳をすませば
耳をすませば

 

 

■雫の物語は何度も書き直されてる

今回再度耳すまを観なおして気づいたんですが、雫は物語を少なくとも2度は全面的に書き直しています。

耳をすませば
耳をすませば
耳をすませば

その証拠がこちら。最初はノートに書いていて、横書き。でも、悪夢の後のシーンでは縦書き原稿用紙になっていて、完成版は左綴じの横書きです。一旦全部破棄して書き直したくなるの、わかるわあ。苦しいよね。

 

 

■実は動くバロン

耳をすませば

バロン(人形の方)、実は腕が動いてポーズを変えることができます。最初に登場したときは左手で帽子を後ろに持ち、2回目はそれを前に。3回目には右手に持ち替えています。たぶんお爺ちゃんがボーズを変えてるんでしょうね。かわいい。

 

 

■朝日を見た場所はどこ?

耳をすませば

シータ「わたしのいた丘から日の出と都庁が見えました。今は11月だから、日の出は真東よりちょっと南へ動いています。日の出は都庁の少し左だったから・・・」

耳をすませば

埼玉の飯能やんけ!!
聖蹟桜ヶ丘から直線距離で27km! 聖司くん、ちょっと頑張りすぎです。


以上、いかがだったでしょうか。久しぶりに耳すま観たけど、30年前の作品なのに全く古く感じないんですよね。テーマが普遍的だからでしょうか? 凄い。
この「耳をすませば」という作品、恋愛映画のように思われがちですが、僕は脚本を書いた宮崎駿さんと監督の近藤喜文さんがテーマにしているのは恋愛じゃないと思っています。この映画に登場する大人は、みんな自分のやりたいことがはっきりしてるんですよね。お母さんは原作では専業主婦だったけど、子育てをひと段落させてから大学院に入って勉強してるし、お父さんも仕事の傍らで郷土史の研究をしてる。お爺ちゃんズは音楽を続けてる。大人じゃないけど、聖司くんも夢に向かって留学しようとしてる。そんな中で自分のやりたいことを探してもがく姿が、宮崎&近藤監督の描きたかったことなんだと思います。

 

最後に宣伝です。

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ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。感想やコメント、違う意見などをいただけるととても嬉しいです。


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