こるね酒

原則毎日AM11時更新+α。日本酒好きのホルン吹きです。飲んだお酒を、ジブリ映画のキャラやシーンに例えながら紹介します。異論反論大歓迎。日本酒に詳しくない方でも、ジブリ作品に詳しくない方でも楽しんでいただけるように書いていきます。

[ジブリ酒]紀勢鶴 > おひいさま(もののけ姫)

【紀勢鶴 吟醸酒 10 years old】(きせいつる)

トパーズみたいな美しく澄んだ10年古酒

紀勢鶴

幻の酒と言われる「龍神丸」のお蔵さん・高垣酒造さんによる10年熟成古酒です。龍神丸は漫画「もやしもん」で有名になったお酒。まだ飲んだことないんですよね。だからこちらの紀勢鶴も楽しみで、メニューを見て真っ先に注文しました。

まずは色が素晴らしくきれいな黄色。実は古酒というのを見落として注文したんです。そしたらこんな色だったからびっくり。かなり色づいていますが濁りはなく、トパーズのような澄んだ美しい黄色です。

香りも素晴らしい。熟成酒らしい穀物感と焦げ感のある深い甘さがぶわぁ。でも、古酒にありがちな埃っぽさはありません。香りも澄んでる。

口に含むと、とろっと蜂蜜カラメルの甘味。一歩引いたところの旨味もしっかり。そしてほんのり気持ち良い苦味が10年という歳月を感じさせます。雑味は無く、とても美しい味わい。そして後味もふんわりきれいです。まさに円熟という言葉がぴったり。

えっ?これ日本酒度+2.5!? この甘味で! もっと甘い印象でした。アルコールは17度と強めですが、まろやかにカドが取れてて、嫌な刺激は全くありません。
これは凄まじいお酒。

しかも、帰って調べてみたら、さらに驚きました。
このお酒が仕込まれた2010年、その時に杜氏だった八代目蔵元の高垣淳一氏が、46歳という若さで急逝されました。つまり今回のお酒は、高垣淳一氏が醸した最後のお酒。
杜氏が亡くなられた後、蔵は奥様が継がれました。でも、奥様は酒造りについては全くの素人。次の年に造られたお酒は、一升瓶にして100本だけだったそうです。
その後、数々の苦難を乗り越え、生産も一升瓶にして約2万本まで回復した10年後の2020年。ついに送り出す、亡き夫の造った最後のお酒。いったいどんな想いが込められているのでしょう。これ、もしかしてとてつもなく貴重なお酒をいただいたんじゃないでしょうか。

本当に素晴らしいお酒でした。そして今の高垣酒造さんのお酒も飲みたくなりました。

ちなみに、今回のお酒と全く同じかどうかはわかりませんが、同じ紀勢鶴10 years oldと新酒のセットが、クラウドファンディング・Makuakeに出品されていました。すでに終了していますが、目標比1220%の大成功。そりゃ、こんなストーリーを知ってしまったら飲みたくなりますわ。

ジブリで例えると「もののけ姫」のおひいさま。冒頭に登場するアシタカの里の長老です。確かに歳はとってるけど、濁ってはいません。立ち振る舞いから優しさと気高さがにじみ出ています。でも、このままではタタリ神となってしまうアシタカを、村を守るために追放するという苦渋の決断を迫られます。

満足度:★★★★★

念のため補足です。この満足度はお蔵さんのエピソードを知る前につけたものです。それだけ味も素晴らしかった。

 

もののけ姫©スタジオジブリ

紀勢鶴

 

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