【三十六人衆 蒼天 純米酒】
おとなしく 引っ込み思案な 淡口酒
はじめましてのお酒、山形県酒田市・菊勇(株)さんの三十六人衆です。きくいさみ? きくゆう?
こちらはの読み方は「きくいさみ」さんです。神奈川の吉川醸造に菊勇(きくゆう)という銘柄もあって、ややこしいんです。吉川醸造と言えば、雨降の商標問題はどうなったんでしょうね?
まあ、三十六人衆に戻りましょう。三十六人衆は、英語で書くと「36 Guardians」。お、なんかカッコいいぞ。
この銘柄名の由来は、公式サイト(https://36guardians.com/) によると、
『中世、東の国を追われた一人の姫を守りながら、三十六人の臣下は、山を越え庄内平野にたどりついた。』
だそう。
うん、全くわかりません。
でもさらに調べると、いろいろわかりました。
中世というのは具体的には1189年のこと。姫とは、奥州藤原氏三代目・藤原秀衡の妹または後室の方のことです。この年の閏4月、四代目・藤原泰衡は、源頼朝の圧力に屈して源義経を自害に追い込みます。それでも頼朝は泰衡を許さず、奥州に出兵。9月には結局、泰衡も家臣に殺され、奥州藤原氏は滅亡してしまいます。
そんな奥州藤原氏の係累ですから、頼朝の追求は厳しいものだったでしょう。その姫を守って酒田まで落ちのびたのが36騎の家臣たち。平泉から日本海側の酒田までは、ほぼ真西に109kmの距離。その間はほぼ奥深い山で、行程はかなり厳しかったはずです。
でも逃れた甲斐があり、姫は1217年に90歳で亡くなるまで、静かに余生を過ごせたそうです。そして36騎の家臣たちは回船問屋を営み、豪商として酒田三十六人衆と呼ばれる自治組織に発展します。酒田三十六人衆は、戦国時代も戦い抜き、江戸時代に入っても商人ながら苗字帯刀を許され、明治維新まで自治権を持ち続けました。江戸幕府の強固な体制の中で自治権を維持するって凄いことですね。もちろん36家の中には栄枯盛衰があり、別の家がその株を買って三十六人衆に加わることはあったそうです。それでも10家は明治までの700年近くを生き抜いたそう。歴史の重みに震えます。
ん? 姫、1217年に90歳ということは、1189年当時は62歳ですね。思ってたイメージとちょっと違った。でもまあいいでしょう。お酒をいただきます。
香りはほとんど感じずに、口当たりもさらりと水のよう。おとなしい酸と旨味が順番に、ほんのり顔を出すけれど、とても淡麗さらさらり。
甘味はほとんどないけれど、辛口感すら全くない。しいて言うなら淡口酒。15度のアル感さえも感じない、12度くらいの飲みやすさ。こないだのKEGの真澄さん(12度)と同じくらい。
これはちょっと温めたら仲良くなれるかな? グラスを手で握って温度を上げてみましょう。
うーん。
香りに、ちょっと水っぽさが出てきました。2日くらい放置した水の感じ。そんなにイヤじゃないけど無くても良い香り。
味わいは相変わらずおとなしいけど、少しだけ主張するようになって、旨味が最初からふわん。でもやっぱりおとなしいです。
アテを合わせるなら、フグとかタイとかの淡白なお刺身。味の濃いものだと、負けるというより、ガブガブ飲めてしまいそう。
36ガーディアンズという厳つい名前に反して、引っ込み思案な子でした。
ジブリで例えると「おもひでぽろぽろ」の小学生タエ子。淡いおもひでのひとコマ。
このお酒、蒼天という名前も、蒼天航路という漢(おとこ)の生きざまを描いた三国志マンガのイメージがあるから、だいぶ違うんですよね。
元の「青空」という意味にしても、そんなカラっとした感じよりも、やさしい曇り空のイメージに近いです。
「雨の日と曇りの日と晴れと、どれが一番好き?」
好き度:★★★☆
雨が降っている時によく思い出すんだけどおもひでぽろぽろで
— imi ☁ (@_imi_1230) 2019年7月13日
「雨の日と、曇りの日と、晴れと、どれが一番好き?」
「く…くもり」
「あ、おんなじだ!」
という会話で告白もしていないのに両想いになったような気持ちになるというかこういう遠回しな会話で運命を感じてしまうの本当に良い pic.twitter.com/f9T7RNKUW5
【DATA】
蔵元:菊勇株式会社(山形県酒田市)
造り:純米
原料米:出羽の里
精米歩合:65%
アルコール度数:15% ・・・ 普通
日本酒度:+2 ・・・ ちょい辛
酸度:1.8 ・・・ 高い
製造年月:2023年11月
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