こるね酒

原則毎日AM11時更新+α。日本酒好きのホルン吹きです。飲んだお酒を、ジブリ映画のキャラやシーンに例えながら紹介します。異論反論大歓迎。日本酒に詳しくない方でも、ジブリ作品に詳しくない方でも楽しんでいただけるように書いていきます。

[ジブリ酒]解説「風立ちぬ」 宮崎監督の投げかけた2つのテーマとは?

風立ちぬ©スタジオジブリ 

次回8/27(金)の金曜ロードショーでは、「風立ちぬ」が放送されます。

ということで、作品・キャラクターを紹介しつつ、風立ちぬに例えたお酒や作品の見どころを語ります。こんなお酒を飲みながらテレビを見るのはいかがでしょうか。

 

主人公・堀越二郎

風立ちぬ

宮崎監督作品には珍しい、実在の人物です。零式艦上戦闘機ゼロ戦を開発した飛行機技師。空に憧れていたけど、自ら空を翔けることはできずに、設計者になります。美しいものが好きで、まっすぐで、純粋。しかしそのために、いろんなものを犠牲にする業の深い人。全量純米大吟醸というこだわりを持つ楯の川酒造さんに通じるところがあります。

 

ヒロイン・菜穂子

風立ちぬ

美しくて儚い女性ひとです。でも、内面にはとてもしっかりした芯がある。そして最後にある選択をします。菜穂子と二郎の愛が、この作品の見どころのひとつです。ただ、すいません。このお酒・十四代は飲もうと思ってもなかなか手に入らないと思います。日本酒の最高峰。美しい味わいに惚れ惚れします。

 

本庄

風立ちぬ

本庄は、二郎の親友です。いつもしかめっ面してるけど、良い奴。主人公の二郎と並んで、宮崎監督自身を色濃く反映しているキャラクターです。そのあたりは後で語ります。

 

カプローニ

風立ちぬ

カプローニは、二郎の夢の中に出てくるイタリアの飛行機技師です。ぶっちゃけ、最初に観たときには、彼が何のために出てくるのか意味不明でした。ちょっとわかりにくい。だからここでネタばらししちゃいます。これがわかってると風立ちぬという作品がより鮮明にわかるようになりますから。
カプローニは、メフィストフェレスなんです。ゲーテの「ファウスト」に登場する悪魔。キリスト教における悪魔というのは、人間を誘惑し、堕落させる存在なんですね。カプローニも、二郎を飛行機設計という業の深い道に誘惑する。その言葉は、このお酒・W(ダブリュー)のように甘美に響きます。

 

この作品の見どころ、ひとつは先程も挙げた、二郎と菜穂子の愛です。でも、正直それは宮崎監督の描きたかったことの主題じゃない。もっと大きなテーマが2つあります。

ひとつめは、宮崎監督が自分自身に投げかけたテーマ「戦争をどう描くか」。宮崎監督は、学生運動に参加していたほどのゴリゴリの左翼。戦争には大反対です。でも、戦闘機や戦車は大好き。その矛盾に真っ正面から向き合ったのが風立ちぬという作品なんです。
実は主人公の二郎は、そのあたりのことは全く考えていません。でもその代わり、その矛盾は本庄が抱えてくれます。だからこの作品において本庄は欠かすことのできない存在。本庄がどのように答えるのか、注目してください。

そしてもうひとつは、宮崎監督が僕たちに投げかけたテーマです。
宮崎監督はカプローニに言わせます。「創造的人生の持ち時間は10年だ。君の10年を、力を尽くして生きなさい」。その言葉の通り、二郎はいろいろなものを切り捨てて飛行機の設計に向かいます。宮崎監督も、同じようにアニメに向かい合いました。その上で、宮崎監督は僕らに「君たちはどう生きるか」と問いかけているんです。大切なものを犠牲にするほどの覚悟で、真摯に仕事に向き合っているか、と。

風立ちぬをまだご覧になっていない方、いろいろネタバレすいません。でも、このようなポイントを押さえて作品を観ると、より深く楽しめると思って解説を書きました。凄い作品なので、ぜひ「風立ちぬ」ご覧ください。

最後に、現在制作中の宮崎監督の新作は、吉野源三郎作「君たちはどう生きるか」だとされています。それがどのような作品になるかは、全然わかりません。宮崎監督、原作を思い切って改変することには定評がありますからね。
でも、仕事に対して「君たちはどう生きるか」という問いかけは既にされています。だから僕は、次回作は風立ちぬとは逆に、人間として「君たちはどう生きるか」を突き付けられる作品になるんだと思っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今日は夜11時に、もう1本お酒の紹介記事を更新します。

 

 

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