【十石 祝 純米吟醸 生】
美味いのか? 大手資本の 復活蔵
このお酒を造る松山酒造さんは、日本三大酒処のひとつ・伏見のお蔵さん。売上高全国2位の超大手・月桂冠さんのグループ企業で、元々は、月桂冠さん向けの普通酒を造って桶売りしていました。一時期は5000石(一升瓶50万本分!?)も造っていたのですが、生産量は徐々に減り、設備の老朽化とコロナ禍の打撃で、2020年度でついに酒造りをやめてしまいます。
その再建を任されたのは、月桂冠の二号蔵で製造責任者だった高垣幸男さん。月桂冠では全国新酒鑑評会で金賞を8回も獲得し、2019年には京都市伝統産業「未来の名匠」にも認定された実力派。月桂冠のアメリカ支社で酒造りをした経験もお持ちです。
この再建、一時は約3600㎡の敷地をマンションや駐車場にしてしまうことも検討されたそうです。しかし、高垣さんと月桂冠の出した結論は、規模を大幅に縮小して、特定名称酒に特化した蔵として再生するというもの。そして、原料も京都産にこだわり、京都のお米・酵母・麹菌のみを使うことに決定。設備も一新、2100リットルのタンク4本という小規模生産から再始動し、ついに今年2023年の3月に最初のお酒がリリースされました。
銘柄名は、地元伏見の水運を担った 十石舟にちなんだ「十石」。十石舟は、積載量が10石=1000升=1800リットルということかな? 少量生産らしい銘柄名ですね。ラベルも、石の字がやたら長いですが、十石という文字になっています。知らなきゃ読めませんが。
ちなみに復活の経緯は、SAKE Streetさんの6/13付けの記事が詳しいです。めちゃくちゃ面白い記事なので、ぜひご覧ください。実は今回この十石さんを選んだのも、この記事を読んで気になってたからなんです。
でも、そもそも月桂冠さんのような大手メーカーと小規模酒蔵は、酒造りのスタイルが全く違うはずですよね。実力のある杜氏さんとは言え、美味しいお酒が造れるのか? そんな不安も抱えつつ、飲んでいきましょう。
香りはあまりありません。かすかに穀物甘旨ナッツ。ただ、穀物感があるのにきれいですね。これは期待できます。
口に含むとやわらかく、甘旨ふんわりこんにちは。そこからやさしい米旨が、ふわりふわりと漂います。
なんだこれ!? めちゃくちゃ美味しい!!!
カシューナッツの甘旨とふんわりアルコールの含み香が、ほわあっと広がって、ふわっと消えるのも幸せです。
これは凄い! やさしくて奥ゆかしくて、きれいで深みもある。これ生酒なんですよね。ナッツ感のある生酒って面白い。フレッシュさがあるわけではないけど、落ち着いていて素敵です。
アテで合ったのは、バイ貝の煮付け。貝の旨味がたっぷりで、甘辛醤油もやさしくじわり。うんまあああ。それにお酒の旨味が交わってほわああん。さらにうまああああ。
力強いお酒じゃないので、やっぱり和食に合わせたいですね。でも、濃い味じゃなければ意外に幅広く合わせられるんじゃないかと思います。
素晴らしいお酒でした。まだ立ち上がってすぐなので、ここからさらに変わっていくかもしれません。これからさらに期待です。
ジブリで例えると「魔女の宅急便」の老婦人。ニシンのパイや、キキへのプレゼントのケーキを焼いてくれる人です。やさしくて上品で、きれいな歳のとり方をしています。このお酒は熟成じゃないけど、熟成みたいな落ち着きがあるんですよね。
好き度:★★★★★
女優の加藤治子さん亡くなってしまったのか・・・
— S-T-K (@sakebu_kemono) 2015年11月5日
ジブリアニメの魔女の宅急便の老婦人役の声がピッタリですごく好きだった。魔女の宅急便が好きな理由の一つだったと思う。 pic.twitter.com/PkvwEoWVPL
【DATA】
蔵元:松山酒造株式会社(京都府京都市伏見区)
造り:純米吟醸 生酒
原料米:京都府産 祝
精米歩合:60%
アルコール度数:16% ・・・ 高め
酵母:京都酵母「京の琴」
製造年月:2023年5月
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