【夜明け前 絹華 純米吟醸】
絹のよう 華やかなのに やわらかく
はじめましてのお酒、夜明け前さん。長野県上伊那郡辰野町・ 小野酒造店さんのお酒です。
小野酒造店さんは、元治元年(1864年)創業。幕末まっさかりですね。当初は千歳鶴という銘柄を造っていたのですが、明治になって商標制度ができたとき、他のお蔵さんに先に「千歳鶴」を登録され、使えなくなってしまいました。北海道の千歳鶴さんですね。で、次の銘柄が「頼母鶴(たのもつる)」。そして、1972年に新たに誕生した銘柄が今回の「夜明け前」です。
銘柄名の由来は、島崎藤村の小説「夜明け前」。「木曾路はすべて山の中である」との書き出しで始まるこの小説は、信州木曾谷の馬籠宿を舞台に、幕末から明治維新前後の歴史に翻弄される人間群像を描いた大作です。主人公のモデルは、国学者として幕末を生きた藤村の実父。この方、藤村が14歳の時に、精神を病んで島崎家家中の座敷牢で亡くなっているんですよね。Wikipediaを見るだけでもその壮絶な生きざまに圧倒されます。
この銘柄が生まれた1972年は、藤村生誕100年の年。小野酒造店さんは、この銘柄を付けるにあたり、藤村のご子息から銘柄として使用する許可を得られています。その時のご子息から求められた約束が、「命に代えても本物を追求する精神を忘れることなく、一生を通じて味にこだわる」こと。これは生半可な覚悟では名前を使えませんね。そして小野酒造店さんはその約束を違えることなく、夜明け前は鑑評会で上位入賞し、一気に注目を集めるようになりました。
なかなか身の引き締まるエピソードが続きました。こちらも気合を入れてレビューに移りましょう。
今回の「絹華」は、日本酒の旨味成分「α-EG」を最大限に高めた世界初の純米吟醸なんだそう。α-EGは皮膚真皮層のコラーゲン量を増やして肌にハリをもたらすことが知られており、金沢工大の分析では、絹華には通常の3倍のα-EGが含まれているんだとか。どんな味わいでしょう?
香りはおだやか白ブドウ。これが不思議とやわらかく、酸があるけど尖っていない。
口に含むとフルーティー。酸味と甘味がふんわりと。リンゴの酸甘なんだけど、やはりめちゃくちゃやわらかい。酸がふんわりふくらんで、最後はほわっとおだやか旨味。含み香わずかに渋アルほわん。後味じわっと渋味が残り、旨味もその後じんわり長く。
なんだこれ!?
酸が中心でフレッシュなのに尖ったところが全くなくて、旨味もしっかりあるのにおだやか。相反するはずの特徴がお酒の中で融合しています。
絹華という名前もなるほど。絹のようになめらかで華やかなお酒でした。
ジブリで例えると「おもひでぽろぽろ」のリエ。小学校編で、生理で体育を休んだことを男子にからかわれても、平然と笑い飛ばせる女の子です。若いんだけどやわらかくて余裕がある感じ。
好き度:★★★★
映画「おもひでぽろぽろ」にて生理がうつるとちゃかす男子に「バッカみたい」「エッチね〜!」って余裕ある対応するリエに、なんて素敵な人なんだ!とキュンキュンしたな😌
— オポチュニティ大作戦 (@SatouDaisakusen) 2022年11月25日
分かる男子いる?! pic.twitter.com/hqeeOR2x53
【DATA】
蔵元:株式会社 小野酒造店(長野県上伊那郡辰野町)
造り:純米吟醸
原料米:兵庫県小野市下東条産 特等 山田錦
精米歩合:55%
アルコール度数:15% ・・・ 普通
日本酒度:+14 ・・・ 大辛口
製造年月:2024年6月