こるね酒

原則毎日AM11時更新+α。飲んだお酒を、ジブリ映画のキャラやシーンに例えながら紹介します。異論反論大歓迎。日本酒に詳しくない方でも、ジブリ作品に詳しくない方でも楽しんでいただけるように書いていきます。

[特集]玄米酒って日本酒を名乗れるの?

玄米酒

さきほど、玄米を使ったお酒・長寿金亀さんのレビュー記事をアップしました。
実は最初このお酒を見た時、ふと疑問が浮かんだんです。
あれ? 玄米だと日本酒名乗れないんじゃなかったっけ?
たしかそんな記事を見たことがある気がするんですよね。で、調べてみたら、これがなかなかややこしい。たくさんの方の知恵をお借りしながら情報を集めたので、ここにまとめます。

 

酒税法ではどうなっている?
まずは、法律を見てみましょう。お酒の定義と言えば酒税法酒税法における「清酒」を見てみましょう。

酒税法における「清酒」の定義

いろいろ書いてありますが、玄米についての記載はありませんね。これだけ見ると玄米でも日本酒を名乗って良いようにも見えますが、まだ油断はできません。酒税法第三条三のイに清酒の定義として『米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの』とあります。この「米」に玄米が含まれるかどうかで判断が分かれます。

なお、日本酒とは、清酒の中で『原料である米、米こうじに日本国内産米のみを使用し、日本国内で醸造したもの』です。日本酒と表示してあれば、それは全て清酒になるわけですね。

また、よくある誤解として、平成16年に純米酒の「精米歩合70%以下」規定が廃止されたことを理由に挙げられる場合があります。ただ、こちらは特定名称酒(今回の場合は純米酒)の規定。そもそも清酒じゃなければ純米酒は名乗れないので、今回は関係ありません。


それでは、まずは玄米だと日本酒を名乗れない派の意見を見てみましょう。

 

■土田酒造さんの見解
まずは、低精白には定評のある土田酒造さん。かつて挑戦した「ほぼ玄米」のお酒についての記事を見つけました。

「これ酒になんの?」ー “ほぼ玄米”への挑戦、星野さんの不安とは?(前編)

この中に『“ほぼ玄米”と書いてるのは、精米歩合99%だから。精米しないと清酒を名乗れない』という表記があります。まあ確かに玄米OKなら、土田さんなんかは真っ先にやりそうですね。
ちなみに、こちらの記事、試行錯誤の様子が描かれていてめちゃくちゃ面白いです。


■八戸酒造さんの見解
お次は、陸奥八仙を醸す八戸酒造さんの記事。八戸酒造さんもかつて精米歩合99%のお酒を造ったことがあります。

陸奥八仙 レイメイ99

このお酒の裏ラベルには『酒税法上玄米では日本酒を名乗れないので1%だけ削った』とあります。日本酒の原材料は「米・米麹を使用すること」という決まりがあるのですが、その「米」とは白米のことを指し、玄米だと「米」ではないのだとか。ふむふむ。
ちなみに裏ラベルには、続いて『原料米が玄米に近づけば近づく程、水を吸わなくなり、米が溶けにくくなり、酵母が暴れ出します。それらをどうにかこうにかコントロールして極力キレイな酒質を目指しました。鑑評会出品酒より手間暇のかかった99%をお楽しみ下さい』とあります。やっぱり玄米酒を造るのは大変そうですね。


■岡村本家さんの見解

今回いただいた岡村本家さんの長寿金亀を見てみましょう。こちらは「玄米使用」と明記されています。ただ、精米歩合は書いていません。そこで、岡村本家さんにメールで問い合わせしてみました。いただいたご回答がこちら。
こちらのお酒は玄米を使用しておりますが、一部精米したお米を使っております。そのため日本酒と表記させていただいております
おっと!
怪しくなってきました。確かに、一部に精米したお米を使っていても、玄米使用には違いありませんね。やはり玄米だと日本酒を名乗れないのでしょうか?

 

■新政酒造さんの見解

新政さんには低精白の涅槃龜にるがめというシリーズがあります。こちらの、今年の頒布会で出たのが涅槃龜100。

こちらには精米歩合100%と明記されています。品目もちゃんと「日本酒」となっている。ってことはやっぱり、玄米でも日本酒を名乗れるということ?
ちなみにこちらのお酒、こないだいただきました。後日レビューを出します。

 

■平六醸造さんの見解

こないだ発芽玄米を使った「Re:vive 空我」をいただいた平六醸造さん。美味しかったなあ。その時の記事にも書きましたが、発芽玄米はお米には含まれず、清酒製造免許がなくても造れるということでした。
ただ、そこに行きつく前には玄米も検討したんだそうです。ところが『税務署に確認したところ、玄米であっても『清酒』に該当してしまうから(清酒製造免許がないと)ダメだと言われた』とのこと。税務署の見解というのは強いですね。以下、ソースのSAKE Streetさんの記事リンクです。

先祖の酒蔵を復活させて挑む「自分にしか造れない酒」 - 平六醸造 代表・平井佑樹さん (後編)

 

■さくら酒店代表・日本酒王子・近藤悠一氏の見解

YouTubeでも日本酒王子として活躍されているさくら酒店の近藤悠一さん。「教えて!日本酒王子」というLINEオープンチャットも運営されています。そちらでも質問をしてみたところ、わざわざ国税庁のお酒の担当官に確認していただきました。その結果、『玄米を使用して、こうじ米の使用割合が15%以上であれば、清酒と呼べる』と回答をいただいたとのこと。国税庁の回答なら信頼度が高いですね。
近藤さん、わざわざ問い合わせていただき、本当にありがとうございます。
さくら酒店さんの販売サイトはこちら。

さくら酒店さんでは、マイナス5℃で保管した「零下」という販売店ブランドのお酒も扱われています。これ、前からめっちゃ気になってるんです。氷温熟成って、熟成はゆっくりだけど酒質はなめらかになって、めっちゃ美味しいんですよね。

 

これ以外に、直接お話しできたわけではないので酒蔵名は出しませんが、とある酒蔵さんも「玄米でも日本酒を名乗れる」という見解だったそうです。わざわざ確認していただいた遊撃広報本部長さんをはじめ、一緒に調べたり考えたりしてくれたたくさんの方々、本当にありがとうございました。

また今回、日本酒を名乗れない派のお蔵さんには、問い合わせフォームやメールで質問をさせていただいています。ただ、数日待ったのですが、日本酒を名乗れない根拠については今のところ回答をいただけていません。回答をいただけたら記事を更新したいと思います。

 

■結論:こるねの見解

さくら酒店の近藤さんからお問い合わせいただいた国税庁の回答や、平六醸造さんが税務署に聞かれた内容を見る限り、精米歩合100%(無精白)であっても日本酒を名乗れる可能性が高いように思います。ただ、名乗れない派のお蔵さんも、何かしらの根拠があって少しだけ精米することにしたはず。ここからは完全に僕の推測なんですが、おそらく統一見解が定まっていないんだと思います。法律だって完全ではないので、全てにおいて厳格な定義ができているわけではありません。そんな場合は、いろんな法令を見ながら総合的に判断することになります。今回はそれぞれの判断が違っていたのでしょう。それも、おかしなことではありません。ただ、もし問題があるようなら、今後統一見解が出ることもあるかもしれません。
というわけで、曖昧な結論で申し訳ありませんが、僕にはどちらが正しいのか断定することはできません。
みなさんも玄米酒を造る時には、当局に確認してから造ってくださいね。

 

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