【花巴 水酛×水酛 】
燗にして 甘酸どどどど コクずしん
サケサミット2日目の9杯目。奈良県吉野郡・美吉野醸造の花巴さんです。よく
変態って凄いことだと思うんです。ただ普通のお酒と違うだけじゃダメ。美味しくなければ、それは単なるハズレ酒。本流から大きく離れて、しかも美味しいお酒だけが変態の称号を得ることができるんです。
そんな花巴さんの中で、前から気になっていたのがこの水酛×水酛。水酛とは、菩提酛とも呼ばれ、約600年前から奈良の菩提山正暦寺で行われていた酒母作りの方法です。だいたいは酸味とコクとクセがつよつよの変態酒になりやすい製法。まあ、この前日に飲んだみむろ杉の木桶菩提酛みたいな例外もあるんですけどね。あれにはびっくりしたなあ。
で、今回のお酒の「水酛×水酛」は、仕込み水の一部を水酛の日本酒にした、水酛のお酒という意味。つまり、貴醸酒の造り方ですね。この製法だと、
つまり、変態なお蔵さんが造る、変態×変態の激甘酒。
いったいどんなことになってるのか、楽しみでしかたありません。
実はこの日は最初から、このお酒を飲むことは決めてました。でも激甘なのは知ってたから、デザートにしようと思って後回しにしてたんです。それが満を持して登場。まだ残ってて良かった~。
で、いよいよいただこうとしたら、お蔵さんからストップがかかりました。
「ちょっと待って。今、燗を付けてるから」
こんなイベントで燗!?
当然会場のホールにはそんな設備ないから、たぶん奥の厨房で温めてもらったんでしょう。そんな手間をかけてまで燗を味わってほしいということですね。そりゃ絶対飲まなきゃ。後回しにはなっちゃってたけど、めちゃくちゃ良いタイミングだった!
そして「燗が来るまでこれ飲んでて」って注がれたのが、常温の水酛×水酛。小さいグラスに半分だけ。まずはこちらから味わっていきましょう。
色は、今日の他のお酒とは明らかに違うほの黄色。
香りはコク甘どん! 熟成感のある濃厚な甘さとコクが良いですね。
味わいも、いきなり甘どん! そして後半にコク苦ズシン。濃くて重くて良いですねえ。でも意外に酸味も旨味も強くなくて、なぜかきれいです。
甘っ!! ウマっ!!
っと飲みながら待ってるうちに、燗を付けた徳利が来ました。一合徳利かな? すぐなくなりそう。これ飲めるのほんとラッキーです。さあ、燗も飲んでいきましょう。
上立ち香、コク甘どどどん 酸どどん。
うおおおお!これは派手! 常温よりも酸がくっきりしてますね。華やかと言えば華やかなんですが、上品さなんてものはありません。これは強い!
そして、口に含んだ瞬間に、甘味酸味が大爆発。コクもたっぷり広がって、後味甘味がじわんと残る。
糖の甘味と乳酸酸味の立ちあがりが凄いですね。コクは、旨味はそれほどでもなく、苦味渋味が中心です。
めっちゃクセがありますね。やっぱり、ど変態だった!
そして、こんなに変態なのにめちゃくちゃ美味しいんです。これはクセになる。1日に何杯も飲むお酒じゃないですが、気が付けば今日も飲みたくなるみたいな感じ。
このサケサミットで、いちばん美味しくて感動したのは、光栄菊のマーレ・ネクタリス。でも一番インパクトがあったのは、この水酛×水酛でした。飲めて良かった~。
ちなみに来られていたのは、橋本芳廣さん。前社長で、現在は顧問をされています。この方がまた、めちゃくちゃ味のある方で、さらに花巴さんが好きになりました。
ジブリで例えると「ハウルの動く城」のソフィーの母。めちゃくちゃ派手で、大砲がのっかったド派手帽子をかぶってます。母といっても継母で、ソフィーとは全く似ていません。そのせいか、2人の関係には結構苦渋も入ってますね。
好き度:★★★★☆
ソフィーの母親って妙に若かったりソフィーに接する態度が微妙だったり、ちょっと違和感があるんだけど、本当の母親はソフィーが2歳の時に亡くなっていて、その後、父親が再婚。つまり継母なのです(でも、一応ソフィーに愛情はあるらしい) #ハウルの動く城 #金曜ロードショー pic.twitter.com/aDdZfzMwdh
— タイプ・あ~る (@hitasuraeiga) 2021年4月2日
【DATA】
蔵元:美吉野醸造株式会社(奈良県吉野郡吉野町)
造り:純米 水酛 火入れ
原料米:奈良県産契約栽培米
精米歩合:70%
アルコール度数:17% ・・・ 高い
日本酒度:-76 ・・・ 超甘
酸度:3.4 ・・・ 高っ!
酵母:無添加(蔵付き酵母)
製造年月:2023年5月
製造年月は今年だけど、醸造年度は2021って書いてあるから、やっぱり熟成もかかってますね。
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