【一生幸福 限定大吟醸 雫原酒】
甘ふわり きれいな苦アル ぐぐぐっと
はじめましてのお酒、一生幸福さん。山形県長井市・鈴木酒造店さんのお酒です。
ああ!
どこかで聞いた銘柄だと思ったら、鈴木酒造店さんでしたか!
鈴木酒造店さんは、前に磐城壽をいただいています。元々は福島県浪江町の海沿いにあったお蔵さんです。でも、2011年の東日本大震災の津波で、全てが流されてしまいました。また、お蔵さんがあった場所は福島第一原子力発電所から直線距離で7kmのところにあり、警戒区域に指定されてしまいます。酒造りどころか住むことすらできなくなってしまいました。
それでも、蔵元杜氏の鈴木大介さんの酒造りへの想いが途切れることはありませんでした。避難先の山形で酒造りができる方法を探し、廃業予定だった東洋酒造さんと出会うことになります。
東洋酒造さんは、昭和6年創業。今回の銘柄・一生幸福を中心に酒造りをされていましたが、後継者不在と経営難のため、廃業を決めていました。ところが、鈴木大介さんが訪れてみると、蔵は動線がよく、思い描いていたイメージと合っていた。そして、仕込み水が輪郭のあるとても綺麗な軟水で、この水で酒を造りたいと思ったそう。
そこで鈴木さんは、2011年10月に東洋酒造の全株式を取得。多額の負債と、従業員2名、2つの銘柄まで引き継ぐことを決意します。もちろん酒蔵が流されてしまった鈴木酒造店さんにも余裕はありません。億を超える借入れをしての、鈴木酒造店長井蔵の再スタートでした。
そうして2011年の11月には酒の仕込みを始め、その年の冬に新生・磐城壽を世に送り出しました。
その後2020年、鈴木酒造店さんはついに浪江の地に戻り、道の駅なみえで酒造りを開始します。借金も完済したそう。でも長井の蔵もそのまま残し、今回の銘柄「一生幸福」を作り続けているんです。
こんなエピソードのある銘柄。一生幸福という言葉の重みが違います。襟を正して背筋を伸ばし、心して飲んでいきましょう。
香りはふわっとアルコール。奥にほんのりメロンのフルーティー。鑑評会系のお酒な感じがします。
口に含むときれいな甘味。旨酸苦アル現れて、最後に苦アルぐぐぐっと。含み香は、甘アルふんわり吹き抜けて、後味苦味がじんわりと。苦味はアルコール由来っぽいですね。苦味が強いのにきれいな、鑑評会出品酒らしい味わいでした。アルコールは17度で確かに強いけど、その強さを感じないくらいきれい。
ちなみにアテは、いつものことですが、レモンが最強でした。甘味があんまり大きくないお酒だから、レモンの酸味でお酒の甘味がブーストされるのが気持ちいい!
ジブリで例えると「もののけ姫」のエボシ御前。美しくて、優しい心は持ちながら、一方で厳しく苛烈な女性です。
好き度:★★★★
エボシ様それ前髪じゃなくて髷だったんですか!? pic.twitter.com/dENEpWbZIA
— 赤岸K (@akagisi_k) 2023年7月22日
【DATA】
蔵元:株式会社 鈴木酒造店長井蔵(山形県長井市)
造り:大吟醸 雫原酒
原料米:兵庫県産 山田錦
精米歩合:35%
アルコール度数:17% ・・・ 高い
製造年月:2024年7月
※今回の鈴木酒造店さんの山形での経緯については、税務研究会さんのインタビュー記事を中心にいろんな記事を参考にさせていただきました。感動的な記事でした。ありがとうございます。
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