こるね酒

原則毎日AM11時更新+α。日本酒好きのホルン吹きです。飲んだお酒を、ジブリ映画のキャラやシーンに例えながら紹介します。異論反論大歓迎。日本酒に詳しくない方でも、ジブリ作品に詳しくない方でも楽しんでいただけるように書いていきます。

雅楽代 > 先輩魔女さん(魔女の宅急便)[ジブリ酒]

雅楽(うたしろ) 雪下(ゆきわたり)

爽やか酸 甘味控えめ 旨ぐぐぐ

雅楽代

雅楽代
雅楽代

お久しぶりの雅楽代さん。新潟県佐渡市天領盃酒造さんのお酒です。

佐渡天領盃酒造さんも、1月1日の地震で被害が出ているようです。幸い、蔵人さんはみんな無事とのことですが、割れてしまったお酒が多数ある模様。お見舞い申し上げます。でもそんな中、断水されている方々への仕込み水の提供をされています。その後、1月5日から仕込みを再開されたとのこと。良かった。

さて、天領盃酒造さんと言えば、代表取締役兼製造責任者の加登さんの経歴がめちゃくちゃ面白いんです。2023年のベスト記事10選にも挙げたんですが、前回飲んだ時の文章に加筆して再掲します。

加登さんは大学時代、スイスに留学します。そこで、ブレイクダンス仲間が自国の文化を自慢しているのを聞き、自分が日本のことを語れない事にショックを受けんだとか。この時点でいろいろツッコミどころがあるんですが、ひとまず続けます。

帰国後、初めて日本酒専門のバーに行って飲んだお酒に感動し、日本酒業界で起業することを決意。そして大学卒業後、就職したのは証券会社でした。その理由は起業したときに活かせる財務や経営の知識を学べるからだと言いますが、やっぱりツッコミたくなる。でもまだまだ続きます。

で、起業するにも日本酒製造の免許が新規にはおりないことを知り、蔵をM&Aで買い取ることにします。それが社会人2年目の時。そして目を付けたのが佐渡天領盃酒造さん。理由は、財務状況がダントツで悪かったから。
なんでやねん!! もう、意味がわかりません。ツッコミどころが多すぎてパンクしそうです。

だけどそこから加登さんは、銀行の融資を取り付け、2018年に本当に蔵を買い取ってしまいます。当時24歳。当然のように全国最年少の蔵元でした。しかも当然、酒造りも経営も未経験。そこから蔵を改革し、発売したお酒・雅楽代はまたたく間に人気銘柄になります。異次元すぎて全く理解ができません。いろんな経営者のエピソードを聞くことはありますが、その中でもダントツで意味がわからない。だからめちゃくちゃ面白いし、カッコいい。


雅楽代という銘の由来は、お蔵さんの住所・佐渡市加茂歌代(かもうたしろ)。それと、「雅びで楽しい(とき)」を掛けています。

そしてそもそもの加茂歌代という地名の由来は鎌倉時代後鳥羽上皇の息子の順徳上皇にまで遡ります。1221年、順徳上皇後鳥羽上皇と共に鎌倉幕府に対して挙兵します。それが世に言う承久の乱。ご存じのように承久の乱は鎌倉方が勝利を収め、後鳥羽上皇隠岐に、順徳上皇佐渡に流されてしまいます。
その佐渡で、順徳上皇は島の人々の歌(和歌)を気に入り、その返礼として土地を与えました。それが、歌の代わりの土地・歌代です。

ちなみに順徳上皇歌人としても有名で、小倉百人一首には順徳院の名で「百敷(ももしき)や 古き軒端(のきば)の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり」という和歌を残しています。これは百人一首の100番目、最後の歌です。昔の栄華を懐かしく思う歌なんですが、都に帰れないまま佐渡で生涯を終えた順徳上皇の気持ちを考えると、この歌の痛切さが身に沁みます。
また、小倉百人一首の撰者・藤原定家も、後鳥羽上皇順徳上皇に仕えた人。この歌を100番目にすることで、かつての栄華に想いを馳せるとともに、百人一首1番目の天智天皇から始まった貴族社会の終わりを痛感していたのかもしれません。

雅楽代という銘は、そんな歴史も背負っているんですね。


さて、雅楽代さんのレビューは前置きがどんどん長くなっていますが、今回のお酒に戻りましょう。

今回の雪下(ゆきわたり)は、雅楽代シリーズ初の冬季限定のお酒。雪下とは、雪の下で麦が芽を出すという意味の大和言葉。だんだんと春に向かっていく様子を表し、福がやってくることを意味する縁起の良い言葉だそうです。今回の地震に重ね合わせてしまいますが、幸せな春が来ることを祈っています。

ちなみにこのお酒、加登さんがイメージしているのは「雪国美人」だそうです。『小柄で髪は長め、色白で顔立ちがキリッとしてコートにマフラー、革のロングブーツ。ちょっと小悪魔感がある感じ』だそう。
これを知ったのは、ジブリに例えるキャラをイメージした後なので、影響は受けていません。誰に例えたかは後ほど。まずはようやく飲んでいきましょう。

香りは米旨マスカット。フルーティーな中に、しっかりお米を感じます。

口に含むとほのピリと、フルーツ酸とふわ甘旨。
酸はくっきりマスカット、それからわずかにレモンもいます。甘味は意外に控えめで、その分さわやかフルーティーが際立ってる。そして奥から旨味がぐぐぐ。
14度の低アルなのに、味わいがしっかりしていて旨味もあります。美味しい!


アテは、エリンギの肉巻きが合いました。肉のたっぷり旨脂を、お酒の酸が爽やかに切ってくれました。

ジブリで例えると「魔女の宅急便」の先輩魔女さん。あんまり甘くなくてツン成分が多め。でもかわいいです。
おお! 加登さんのイメージの「キリっと小悪魔感」に通じるところがある!!

好き度:★★★★

雅楽代

雅楽代

【DATA】
蔵元:苗場酒造株式会社(新潟県中魚沼郡津南町)
造り:純米酒
精米歩合:65%
アルコール度数:15% ・・・ 普通
製造年月:2023年8月


関連記事:

 

←投票リンク踏んでいただけると、とても嬉しいです。

ブログランキング・にほんブログ村へ